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「イスラム国」恐怖今も 古里の学校に通いたい 戦闘で避難 イラクの子どもアンケート

 政府軍やクルド自治政府の治安部隊と、過激派組織「イスラム国」の戦闘で約250万人が住む場所を追われたとされるイラク。身の危険を感じながら北部のクルド人自治区に逃げてきた子どもたちは、学校に通えない不満や古里に戻れない寂しさを募らせている。中国新聞が、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町)を通じて実施したアンケートで浮かび上がった。(二井理江)

 12~16歳の7人が今月中旬、アンケートに応じた。それぞれ、昨年6月に「イスラム国」に制圧されたイラク第2の都市モスルや、その近くのシンジャルから6~8月に家族や親戚と避難してきた。16歳少女は「『イスラム国』がお年寄りや大人の男性、子どもを殺して、若い女性や女の子を誘拐していた」と恐怖の体験を振り返っている。

 いずれも、建設中の建物や今は使われていない元軍用施設、知人宅などに身を寄せている。命の危険はないが、「時々ロケット弾の音が聞こえる」(13歳少年)「今も『イスラム国』がここに来て私たちを殺すのではないか不安」(14歳少年)との声もある。

 勉強や遊び、趣味に伸び伸びと自由に暮らせる年代のはず。しかし、以前から学校に通っていた6人のうち、今も通学しているのは3人だけ。学校に行けない15歳少女は「学校で勉強したいけど、お金がなくて行けない」。15歳少年も「今一番必要なことは学校に行って勉強すること」と訴えている。通っている12歳少年も「友達がたくさんいるから古里の学校の方がいい」と寂しがる。

 「古里の村に帰りたい。誰にも邪魔されずにサッカーをしたい」(12歳少年)「古里の町が解放されてほしい」(14歳少年)「絵の道具がほしい。絵が描きたい」(13歳少年)「恐怖や不安を感じることなく古里で幸せに暮らしたい」(16歳少女)。こうした願いは、今はまだ「夢」でしかない。

(2015年3月26日朝刊掲載)

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