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秋葉前市長の長期保存構想から一転 折り鶴活用アイデア公募

■記者 金崎由美

 広島市の松井一実市長は、国内外から届く折り鶴の活用アイデアを公募する方針を決めた。そのまま残すのではなく、寄贈者が込めた思いを「昇華」させ平和の願いを広げるのが狙いという。この判断により秋葉忠利前市長が長年、唱えてきた折り鶴の長期保存構想は幕引きとなる。

 市は6月、祈りを込めて燃やしたり、はがきに再生したりするなど具体的な方法を募る。実施団体も募集する。折り鶴を一定期間は保存・展示する必要があるのかも問う。

 当面は寄せられたアイデアを市が選考し、実行できる案は8月6日の平和記念式典の時期に試行。今秋に有識者などでつくる検討委員会で審査し、本格的な活用策を決める。

 平和記念公園(中区)の原爆の子の像には毎年、国内外から1千万羽以上の折り鶴が届く。2002年度からは秋葉前市長の指示で焼却せず、市の施設で保管してきた。2010年度末で1億1千万羽、93トンに上る。一部は中区の旧日本銀行広島支店で展示している。

 秋葉前市長は、折り鶴の「圧倒的物量」で平和への思いを体感できる施設が必要として、20~30年分を収容する「折り鶴ミュージアム(仮称)」を構想。有識者による検討委員会が4月上旬、退任間際の秋葉前市長に、候補地を含めた報告書を出していた。

 これに対し、4月の市長選で初当選した松井市長は就任会見で、ボールペンの胴体に再生するアイデアを披露していた。

「折り鶴ミュージアム(仮称)」の検討委員会
 原爆の子の像に届く大量の折り鶴を長期保存・展示する構想について、有識者たち委員8人が2010年9月から4回議論。4月に当時の秋葉忠利市長に提出した報告書では、被爆建物を活用し3~10年分の収容施設を造り、その後20~30年分を収容できる大規模施設を目指す段階的整備を提言。候補地に被爆建物の旧広島陸軍被服支廠(ししょう)(南区)と、広島大旧理学部1号館(中区)を明記した。

(2011年5月28日朝刊掲載)

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