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岸田外相「核軍縮加速を」 NPT会議で演説 米露、早くも応酬

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議は27日、開会行事に続き一般討論を始めた。岸田文雄外相は演説で「核兵器なき世界」に向け、核軍縮や核不拡散の「現実的かつ実践的な取り組み」を積み重ねるよう訴えた。ただ早くも核超大国の米国とロシアが軍縮の姿勢を巡り応酬。最終文書の合意へ厳しい交渉を予感させる幕開けとなった。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 再検討会議で日本の外相が演説するのは10年ぶり。岸田外相は広島原爆による多数の犠牲や後遺症に触れ、「被爆体験は思い出したくないが、二度と繰り返さないため忘れないようにしている」と、被爆者の思いを代弁。核軍縮を加速する必要性を掲げた。

 具体的には核戦力の透明性確保を挙げ、核兵器保有国に対して核弾頭数などの具体情報を定期的に報告するよう要請。核兵器削減の多国間交渉も提案した。核兵器の非人道的影響に関する認識の共有を呼び掛けつつも、それをてこに核兵器禁止を迫る国際世論の高まりには触れなかった。

 世界の政治指導者や若者に広島、長崎を訪問するよう求め、来年、日本である主要国首脳会議(サミット)にも言及。広島市が開催地に立候補しているが「各国の政治指導者に被爆地に足を延ばしてほしい」と述べるにとどめた。

 一方、米国のケリー国務長官は、オバマ大統領が退役核弾頭約2500発の解体ペースを20%加速する方針を決めたと明かして軍縮姿勢をアピール。逆にロシアは中距離核戦力(INF)廃棄条約に違反しているとして「新たな危機を生み出す理由はないではないか」と指摘した。昨年3月のロシアによるクリミア編入は、核放棄と引き換えにウクライナの安全保障を約束した1994年のブダペスト合意を踏みにじるとも批判した。

 これに対しロシア政府代表は「条約違反の根拠はなく、ロシアをおとしめる指摘だ」と反論。米国のミサイル防衛(MD)計画などを挙げ「米国の政策が軍縮を進める上で深刻な脅威になっている」と述べた。

 討論に先立ち、「早急な核軍縮に疑問を持つ人はみな被爆者の体験に耳を傾けるべきだ」という国連の潘基文(バンキムン)事務総長のメッセージが代読された。NPT非加盟国イスラエルのオブザーバー参加も報告された。

(2015年4月29日朝刊掲載)

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