×

ニュース

先の大戦「痛切な反省」 米議会両院合同会議 首相、初の演説 平和への貢献強調

 訪米中の安倍晋三首相は29日午前(日本時間30日未明)、日本の首相として初めて米議会の上下両院合同会議で演説した。戦後70年の節目を踏まえ、敵対国から同盟関係になった日米が世界の平和と繁栄に果たしてきた貢献を強調。歴史認識をめぐっては「先の大戦に対する痛切な反省」を表明した。環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米協議への協力も呼び掛けた。(ワシントン発 城戸収)

 日本の首相が米議会で演説するのは1961年に当時の池田勇人元首相が下院でして以来、54年ぶりだが合同会議では初めて。首相の祖父、岸信介元首相も下院で演説している。

 「希望の同盟へ」と題した英語での演説は約45分間。戦後日本について「先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ」とし、「アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない。これらの思いは歴代首相と全く変わるものではない」と強調した。

 演説に先立ち、真珠湾攻撃などの犠牲となった米兵を追悼する記念碑を訪れたと説明。「私は深い悔悟を胸に、その場に立って黙とうをささげた。米国の人々の魂に、とこしえの哀悼をささげる」と述べた。

 「日本は民主主義の原則と理想を確信している」と述べた岸氏の57年の演説に触れ、日米両国は自由や民主主義、法の支配などの普遍的価値を共有していると強調。自衛隊と米軍の役割を定めた新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定を「日米同盟の強化につながる」とし、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案を夏までに成立させると断言した。「積極的平和主義が日本の掲げる新しい旗」と訴え、日本の役割を拡大していく決意を示した。

 「アジアの海を自由で法の支配が貫徹する平和の海に」と訴え、名指しは避けつつ海洋進出を活発化させる中国をけん制した。

 交渉が大詰めを迎えたTPPを「単なる経済的利益を超えた、安全保障上の大きな意義がある」と指摘。米議会で大統領の交渉権限をめぐる手続きが遅れていることも踏まえ、交渉に日米がリーダーシップを発揮するよう求めた。

(2015年4月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ