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上関原発 知事表明 計画29年 揺らぐ推進派

■記者 久保田剛、山本祐司

 福島第1原発の事故後、原発建設の準備工事が中断した山口県上関町。公有水面の埋め立て免許の延長は現状では認めない―。さらなる計画の遅れを確実にする二井関成知事の27日の発言は推進派の人たちを戸惑わせた。「なぜこの時期に言う必要があるのか」「説明が足りない」。

 「知事から事前に意見を求められておらず、答えようがない」。柏原重海町長は険しい表情で報道陣にこう話し、続けた。「考えがあっての発言だと思う。今後の県の動向を見守りたい」。任期満了に伴う9月の町長選に、「原発推進」の立場で3選を目指すと22日に表明したばかりだった。

 計画浮上から29年。推進派は原発立地に伴う国の交付金や雇用増などを頼りに、人口約3500人の過疎の町の将来像を描く。

 上関町まちづくり連絡協議会の井上勝美事務局長は「知事は地元の意向を尊重するとも言っている。この言葉がある限り計画は進む」と話しつつ、釈然としない表情で「30年間も推進に努力してきた地元に事前に説明があってもいいのではないか」とつぶやいた。 上関町商工事業協同組合の浅海努代表理事も「国の方針決定はいつになるのか分からず、工事がさらに遅れる可能性がある。このままでは町は沈没する」と危機感をあらわにする。

 建設予定地の対岸約4キロにある反対運動の拠点、祝島。住民は知事の発言を冷静に受け止める。

 県議会の本会議を傍聴した「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸貞夫代表は「早急に埋め立てはないとはっきりして一時的な安堵(あんど)感は得られた。でも、まだ安心はできない」とする。漁業橋本久男さん(59)は「最低限の発言」と一定に評価した上で注文した。「中止まで踏み込んでほしかった」

(2011年6月28日朝刊掲載)

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