×

ニュース

軍司令部 模型で記録 原爆による広島壊滅 第一報伝える 元学徒から細部聞き取り

 広島市文化財団は、原爆による広島壊滅の第一報を伝えた中国軍管区司令部の防空作戦室の模型を作り、7月から中区基町の広島城で開く企画展で展示する。図面などの資料が残っていないため、昨夏から構造の調査を開始。12日には、一報を発した岡ヨシエさん(84)=中区=に試作品を見てもらい、細部について聞き取った。(鈴中直美)

 半地下式の作戦室は、爆心地から北約790メートルの広島城本丸の一角にあった。原爆投下当時、比治山高等女学校(現比治山女子中・高)3年だった岡さんは、空襲・警戒警報の伝達業務のため司令部に動員されていた。

 同財団は昨年8月、広島工業大(佐伯区)の協力で壁や天井のコンクリートの厚さを計測。鉄筋の配置なども調べた。十河(そごう)茂幸教授(コンクリート工学)が図面を作り、大東延幸准教授(都市計画)が35分の1のサイズの模型を段ボールで試作した。

 この日、模型を前に作戦室の出入り口の形状や部屋の様子などを岡さんに質問。岡さんは「天井に蛍光灯がずらりと並び、とても明るかった」「壁と天井はコンクリートがむき出し。壁に中国地方の地図が貼られ、部屋の中央に円卓があった」などと回想した。

 十河教授によると、作戦室を囲むコンクリは鉄筋を入れて強度を増しており「鋼材が不足していた当時でも軍の重要施設として造られていた」と分析。大東准教授は「岡さんの証言を参考に模型を完成させたい」と話す。

 企画展は「広島城と陸軍」をテーマに開く。同財団の秋政久裕主任(53)は「証言が聞ける今こそ、できる限り記録しておきたい。さまざまな視点で司令部の実態に迫りたい」と話している。

(2015年6月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ