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平和への願い 気鋭のタクト 広島のNPO 田中祐子迎え来月演奏会 「音楽通じ心一つに」

 音楽で平和の心を世界へ訴えることを目指すNPO法人「音楽は平和を運ぶ」(松尾康二理事長)の初の企画事業「人の心に平和のとりでを築くコンサート・鎮魂と再生」が7月26日、広島市中区の広島文化学園HBGホールで開かれる。第1部でフォーレ「レクエイム」を指揮するのは、新進気鋭の田中祐子。「音楽を通して、広島の皆さんと心を一つにできれば」と熱い思いを語る。(客員編集委員・冨沢佐一)

 第1部のタイトルは「すべて戦争の犠牲者にささげる」。合唱団とオーケストラは、公募に応じた市民にプロを加えて構成する。田中は「名古屋市出身の私は、教師だった祖母が児童を連れ愛知県内で疎開した話を詳しく聞いて育ち、祖母が他界した今も鮮明に覚えている。皆さんと平和への願いを一つにしたい」と、指揮を引き受けた理由を語る。

 作品はモーツァルトやベルディの「レクイエム」と並ぶ傑作。「大変透明感のある繊細な響きが特徴。フォーレが教会のオルガニストだったこともあり、オルガンの響きが効果的。合唱・ソリスト、オーケストラとのアンサンブルを丁寧につくっていけたら」と意欲をみせる。

 東京芸大大学院修士課程を修了して5年余りだが、広島での公演は非公開を含め既に15回。全て広島交響楽団との演奏だった。その広響については「明るく深みのあるサウンド。団員が広島の街をとても愛している」と感じる。

 原爆ドームや原爆資料館を見て、「祖母から聞いていた話とは全く次元の違う悲惨な内容の資料の数々に圧倒された」という。一方で、復興した現在の姿に「美しい公園に原爆ドームがそびえ立つのは印象的。人々が元気だし、皆さんが屈託なく話してくださって過ごしやすい街だと思う」。

 そんな広島に誕生したNPO法人。「平和を願う気持ちを本当の意味で言葉にするのは難しい。音楽は国境も言葉も世代も超えられる特別な存在。音楽を通じて多くの方と願い合う、大変有意義な活動になれば」と期待を込める。

 演奏会は広島市の被爆70周年記念事業の一環で、実行委員会と市の主催。第2部ではカンタータ「土の歌」を作曲者、佐藤真の指揮で演奏する。料金は2千円。事務局Tel082(247)8604。

(2015年6月27日朝刊掲載)

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