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どう見る安保関連法案 元海上自衛隊ペルシャ湾掃海派遣部隊指揮官・落合畯 自衛隊活動まだ不十分 

 安全保障関連法案は、日米同盟を強め、国際社会の一員として当然の義務を果たす上で必要だ。むしろ審議入りが遅きに失したと感じる。観念的な平和論を振りかざしても、国の安全は守れない。早期に法案を成立させてほしい。

他国の本音痛感

 1963年、海上自衛隊に入隊。呉地方総監部幕僚長、海自隊第1術科学校(江田島市)の校長などを歴任。湾岸戦争後の91年、ペルシャ湾に派遣された機雷掃海部隊の指揮官を務めた。自衛隊初の海外実任務だった。

 湾岸戦争の時、日本は米国の要請を拒んで自衛隊派遣を見送り、代わりに多国籍軍に130億ドルを提供した。世界で3番目に多い額だった。だが感謝されるどころか、「金だけ出して人を出さない」と世界から非難を浴びた。そこで政府が重い腰を上げ、掃海部隊を派遣した。

 派遣任務に当たった際、共同で任務に当たった8カ国の指揮官と何度も意見交換した。夜に酒が入った時、「金を出して戦地に来なくていいなら、今この場で100ドル払ってやる」と言われたことがある。日本に対する他国の本音なんだと痛感した。その後、自衛隊の活動は広がったが国際的にはまだ不十分だ。

野党は対案示せ

 政府は、中東・ホルムズ海峡での機雷掃海を集団的自衛権の行使例に挙げ、要件を満たせば停戦前でも掃海を可能にすると説明する。さらに関連法案は、他国軍への後方支援の範囲拡大も盛り込んでいる。自衛隊のリスク増大を懸念する声が出ている。

 ホルムズ海峡は日本が輸入する原油の8割が通過する要衝だ。そこに機雷がまかれ国民生活が危機に直面した時にも、戦闘の可能性を理由に他国に掃海を頼むのか。「安全のただ乗り」とまた批判されるのは明らかだ。国際情勢が変化する中、いつまでも「憲法があるから」では通用しない。

 活動内容と範囲が広がれば、確かに自衛隊のリスクが高まる可能性はあるだろう。ただ、これもリスクを避けて国際協力しなくていいのかという問題だ。政府は「リスクはあるが、日本の国益のために覚悟を持って行ってほしい」とはっきり言えばいい。

 誰だって平和がいいに決まっている。平和を守るために何をすべきかが重要であり、法案を懸念する野党は、きちんと対案を示してほしい。法律論にこだわるのではなく、いかに日本の安全を確保するかにピントを合わせた大人の議論を求めたい。(松本恭治)

(2015年6月30日朝刊掲載)

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