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胎内被爆者ら初の体験記集 記憶なくても体験訴えたい 来月、自費出版 病気・差別の労苦

 被爆70年に合わせ、母親のおなかの中で原爆に遭った人たちでつくる原爆胎内被爆者全国連絡会(43人)が28日、広島市役所で記者会見し、来月5日に自費出版する初の体験記集を公開した。母のあの日の記憶や戦後の生活をまとめた18編を収めている。

 題は「被爆70年に想う」。広島市などの会員男女18人がそれぞれ原爆で家族を亡くした悲しみや病気への不安、差別に悩んだ戦後の一家の労苦を記した。

 執筆者の一人、南区の住職村上由聲(ゆうしょう)さん(69)は、母親が妊娠3カ月ごろに被爆。1946年3月に仮死状態で生まれたという。幼少期から体が弱く、手記では「小学校5年生ごろまで毎日おへそから出血していた」と回想する。

 40歳を過ぎて仏門に入った後、2005年に大腸がんが発覚。13年には胃がんも見つかった。手記に、ある大学教授が講演会で「被爆した身体内のDNAは千年先まで消えないと断言した」と記し、泣きながら2人の娘たちに謝った経験もつづっている。

 記者会見では手記を寄せた9人が思いを語った。村上さんも「記憶はなくても、体の中から体験を訴えたいという思いがこみ上げてくる。多くの人に読んでほしい」と訴えた。

 B5判、49ページ。600部印刷し、うち200部を全国の図書館や被爆者団体に贈る。連絡会が8月5日午後5時20分から中区の市男女共同参画推進センター(ゆいぽーと)で開くシンポジウム(入場無料)でも、1部500円で販売する。事務局の三村正弘さんTel090(7375)1211。(和多正憲)

(2015年7月29日朝刊掲載)

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