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ポーランド語版の「ゲン」全10巻完成

 広島で被爆した少年がたくましく生きる姿を描いた漫画「はだしのゲン」の全10巻を、山口県立大(山口市)国際文化学部の渡辺克義准教授(51)が、8年かけてポーランド語訳版を完成させた。

 渡辺さんは1986年から4年間、ポーランドのワルシャワ大に留学。ポーランド文化を学んだ。帰国後、中学の講師をしていたころ、生徒が一心不乱に読むのを見て、自身もゲンの力強さに心を打たれた。

 2000年に県立大の教員になったのを機に「世話になったポーランドでぜひ紹介したい」と同国で出版社を経営する友人に相談。翻訳は03年4月から始め、04年1月に「HIROSZIMA 1945 BOSONOGI GEN」の第1巻を出版。第10巻の翻訳は3月に終えた。

 ポーランド語は擬音語が乏しく、足音の「タッタッタ」は「TUPTUPTUP(トゥップトゥップトゥップ)」など、オリジナルの擬音語を充てた。

 原作者の中沢啓治さん(72)は「ポーランドはアウシュビッツなど戦争の悲劇を知る国。周りの国にも広がって戦争や核兵器の恐ろしさが伝われば」と完成を喜ぶ。渡辺さんは「ゲンの力強さを感じるとともに、原爆文学や日本文化に興味を持つポーランド人が増えたらうれしい」と話す。(藤田龍治)

(2011年8月13日朝刊掲載)

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