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鋳物が語る「広島」 青原監督の記録映画完成

 広島の地場産業・鋳物の歴史を追った2時間の記録映画「時を鋳込む」が3年がかりで完成し、10月、広島市西区の横川シネマで公開される。鋳物は軍都広島や呉軍港を背景に戦前隆盛を極め、原爆や空襲の後の焦土から再起した。モノを通した「もうひとつの広島」を証言と資料で再現している。 

 「藝州(げいしゅう)かやぶき紀行」などの作品がある広島市安佐南区の記録映画作家青原さとしさん(49)が、広島県鋳物工業協同組合(大田喜穗理事長)の依頼を受けて監督。2008年夏から撮影を始めた。

 映画はマンホールのふたや手押しポンプなど今も街角に溶け込む鋳物製品を探訪。中国山地のたたら製鉄以来の歴史を掘り起こし、備後鋳物師、芸州鋳物師が活躍した中近世に思いをはせる。戦時下の広島や呉では軍需動員で手りゅう弾の筒まで製造し、戦後は自動車部品製造で息を吹き返した近現代の歩みも、じっくり見せる。

 また、鋳型を作る鋳物砂や鋳物に塗布する黒鉛などの業界にも幅広く取材。東日本大震災以降、注目される五右衛門風呂、かまどを製造する工場にもカメラを入れている。

 「鋳物の伝統は戦時下に一度途絶え、取材に苦労した」と青原さん。コーディネーターの野間伸次・野間鋳造所社長(48)は「鋳物は常に時代を投影している。多くの証言から分かった」と感慨を新たにしていた。 (佐田尾信作)

(2011年8月14日朝刊掲載)

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