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CTBT発効探る 広島で賢人会合開幕

 包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委員会の「賢人グループ」の会合が24日、広島市南区のホテルで始まった。4回目で日本では初めて。メンバー21人のうち、核兵器保有国の米国のウィリアム・ペリー元国防長官や英国のデス・ブラウン元国防相たち10人が出席した。条約の早期発効に向けた戦略などを2日間にわたって議論し、25日に「広島宣言」を発表する。

 開会行事のあいさつで、松井一実市長は「広島で、絶対悪である核兵器の恐ろしさと平和を維持することの尊さを考えてほしい。核兵器のない世界に向けた力強いメッセージの発信を」と求めた。

 準備委のラッシーナ・ゼルボ事務局長は「被爆国は核実験のない世界へのリーダーシップを担っている。この会合を条約発効の促進につなげたい」と強調。ペリー氏は米ロ関係の悪化による核実験のリスクに触れ「まずは核実験の一時停止状態を続けるために何をすべきか、真剣に話したい」と意気込みを語った。

 その後、参加者は、米国・中国・北朝鮮と、インド・パキスタン、中東の3地域ごとの条約の批准を促すための活動方針などを非公開で討議した。25日は平和記念公園(中区)を訪れ、原爆慰霊碑に献花。原爆資料館を見学する。(水川恭輔)

核廃絶 停滞感打破狙う 賢人会合開幕 非人道性を訴え

 核兵器廃絶への現実的な一手である包括的核実験禁止条約(CTBT)は、1996年の国連総会で採択されながら、いまだに発効の見通しが立っていない。米国など特定の8カ国が批准していないためだ。被爆地広島市で24日始まったCTBT機構準備委員会の「賢人グループ」会合には、核兵器の非人道性を訴えて停滞感を打破したい狙いがある。

 CTBTは、地下核実験などの核爆発を伴う核実験を全面禁止し、監視や検証の制度も設ける内容だ。すでに日本など183カ国が署名。うち164カ国が批准し、世界の圧倒的多数が早期発効を支持している。しかし、「発効要件国」である、核兵器の保有国や開発能力を持つ44カ国のうち米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタンの8カ国が未批准だ。

 特に各国が動向を注視しているのが核超大国の米国だ。条約批准の承認権限は上院にあり、定数100のうち3分の2以上の賛成が必要。99年のクリントン政権下では、野党共和党が抵抗し否決した。「核兵器なき世界」を唱えたオバマ大統領が2009年に就任した当初は期待が膨らんだが、根回しが進んでいないとみられる。今や与党民主党は上院で半数を割り込み、見通しは暗い。

 CTBT機構準備委(オーストリア・ウィーン)は、採択20年が来年に迫り焦りをにじませる。今月6日、広島市の平和記念式典に出席したラッシーナ・ゼルボ事務局長は「被爆70年は、核実験全面禁止の必要性を再認識する重要な機会でもある」と訴えた。9月に米ニューヨークで開く発効促進会議の共同議長国の一つに日本を据え、リーダーシップに期待を寄せている。(田中美千子)

(2015年8月25日朝刊掲載)

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