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早期発効へ広島宣言 CTBT 賢人会合閉幕 8ヵ国に批准要求

 包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委員会の「賢人グループ」は25日、広島市南区での会合で、条約の早期発効に向けた「広島宣言」を採択した。現状は「常にリスクを抱えた状態」と指摘。批准していない8カ国の指導者に対し、多国間で働き掛けるよう提言した。日本初開催の会合は2日間の日程を終え、閉幕した。

 会場となった南区のホテルで、出席者の代表4人が記者会見。スリランカのジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長が、序文と八つの指針からなる広島宣言を読み上げた。「発効要件国」である米国や中国など8カ国に対しては「他国を待つことなく、緊急に署名・批准を」と要求。9月に米ニューヨークであるCTBT発効促進会議で共同議長国を務める日本、カザフスタンと共に、同グループも発効へ「焦点を絞った努力」をするとした。

 また「核兵器使用の人類に対する壊滅的結末を防止」するためCTBTが必要不可欠とも強調。発効までの間、核爆発を伴う実験をしない「モラトリアム」維持の重要性に触れ、北朝鮮には核実験を控えるよう求めた。

 準備委のラッシーナ・ゼルボ事務局長は記者会見で「被爆者の核兵器廃絶の訴えなどから、早期発効の必要性を再認識できた」と会合を総括。7月のイラン核合意を例に挙げて多国間の連携の重要性を指摘し「単なる宣言に終わらせず、行動につなげたい」と述べた。

 賢人グループは2013年9月に結成し、会合は4回目。今回はメンバー21人のうち、核兵器保有国の米国のウィリアム・ペリー元国防長官、英国のデス・ブラウン元国防相、フランスのミシェル・デュクロ元外務省軍縮局長たち10人が出席した。(水川恭輔)

 <広島宣言の骨子>
 一、CTBTは核軍縮・不拡散のための最も不可欠かつ実践的な手段。発効はグローバルな責務
 一、世界の指導者に広島、長崎を訪問してほしいとの要望が被爆者にあることに留意する
 一、CTBT発効促進会議の共同議長と連携し、発効のための焦点を絞った努力をする
 一、CTBT発効のため未批准の8カ国に署名・批准を要求。8カ国の指導者に働き掛ける多国間アプローチを要請
 一、北朝鮮に核実験の実施を控えるよう要求

「核なき世界」責任感新たに 平和記念公園訪問 賢人グループ

 CTBT機構準備委員会の「賢人グループ」の10人が25日、広島市中区の平和記念公園を訪れた。原爆資料館を見学。被爆者の証言に耳を傾けた。

 広島平和文化センターの小溝泰義理事長の案内で資料館を巡った。壊滅した市中心部の模型や黒焦げになった弁当箱の前で足を止め、説明にうなずいたり、カメラを向けたりした。

 広島国際会議場では、被爆者の小倉桂子さん(78)=中区=の英語での体験証言を聴き、市が配った用紙に感想を記入。「核兵器が決して二度と使用されないように尽力していかなければならない!」。核兵器保有国の米国のウィリアム・ペリー元国防長官はそうつづった後、小倉さんに「サンキュー」と歩み寄った。

 「核兵器のない世界の実現への責任感が強まった」(英国のデス・ブラウン元国防相)、「ネバー・アゲイン・ヒロシマ」(準備委のラッシーナ・ゼルボ事務局長)…。ほかの参加者も核兵器の非人道性に向き合う大切さや平和への願いを書き、市に託した。小倉さんは「政治に影響力を持つ方々に真剣に聴いてもらった。核兵器廃絶が進まない現状の打破を」と願った。

 台風のため、予定していた原爆慰霊碑への献花は中止した。(水川恭輔)

(2015年8月26日朝刊掲載)

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