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加盟都市5000超す 平和市長会議 核廃絶訴え29年

 平和市長会議(会長・松井一実広島市長)は16日、加盟都市数が5003になったと発表した。国家間の枠組みにとらわれず都市の連携で核兵器廃絶を訴え、発足から29年で5千の大台を超えた。

 平和市長会議は1982年6月、当時の荒木武市長(故人)の提唱で広島、長崎の両市が前身の「世界平和連帯都市市長会議」を設立。2001年に現在の名称に変更した。

 会長は歴代、広島市長が務める。平岡敬元市長までの2代で加盟都市数は464。続く秋葉忠利前市長の3期12年で4500市以上が加盟し、飛躍的に拡大した。

 事務局は市の外郭団体、広島平和文化センターに置き、長崎やドイツ・ハノーバーなど12カ国13市の市長が副会長を務める。  2003年、核兵器禁止条約の実現と2020年までの核兵器廃絶を目指す「2020ビジョン」を提案。06年にベルギー・イーペル市に国際事務局を開設した。

 さらに2020ビジョンの行程表として「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表。昨年ニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議で採択を目指したが、かなわなかった。

 平和市長会議を構成する市は151カ国・地域に及ぶ。欧州が2295市で最多。アジア1492市が続く。原爆投下国の米国は188市。英ロンドン、ブラジル・リオデジャネイロ、タイ・バンコクなどの主要都市も名を連ねる。

 松井市長は「核兵器禁止条約の早期実現へ引き続き加盟促進に努める」とのコメントを発表した。(金崎由美)


<解説>ヒロシマ 発言力に重み

 加盟都市が5千を突破した平和市長会議は「数の力」を増すごとに国際社会での被爆地の発言力に重みを持たせてきた。「賛同者」集めに大きな成果を挙げた今後は、加盟都市が名前を連ねる以上にどれだけ具体的に活動するかが重要となる。

 1982年に前身の組織が発足した平和市長会議が近年急拡大したのは、海外を精力的に飛び回った秋葉忠利前市長の存在が大きい。頻繁な海外出張は市民に賛否あったが、その発信力は被爆地の存在感を高めた。

 加盟都市には会費など財政負担がないことも敷居を下げる。まず多くの賛同者を募り、世界で被爆地の存在感を高める戦略がはまったといえる。その半面、熱心な活動都市はごく一部に限られるのが実情。運営費も広島、長崎の両市だけが公費で負担する。

 市の外郭団体、広島平和文化センターに置く事務局の運営経費は本年度、約1200万円で広島、長崎両市で折半する。この現状について松井一実市長は11月にスペインである理事会で「在り方を提言したい」と加盟都市に負担を求める可能性を探る。

 松井市長が掲げる「出かける平和から迎える平和」の方針とどう調和させるかも課題だ。核抑止論にとらわれた核兵器保有国を動かすには、核兵器廃絶を願う人々が多数派であることを国際舞台で見せつける必要もある。

 約30年かけ被爆地から広がったネットワークが国際政治を動かす存在に育つのか、正念場はこれからだ。(金崎由美)

(2011年9月17日朝刊掲載)

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