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「黒い雨」 被爆手帳却下 広島市・県 50人、年内提訴も

 原爆投下後に降った「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い健康被害を受けたとして、広島市と広島県に被爆者健康手帳の交付を申請していた71人のうち、50人が却下されたことが2日、分かった。申請は当初から国に援護対象区域の拡大を迫るのが狙い。却下された住民たちは、年内にも処分取り消しを求めて集団訴訟に踏み切る。(水川恭輔、田中美千子)

 県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会の関係者によると、市は市内の59人のうち39人、県は安芸太田町などの12人のうち11人を2日までに却下したという。郵送で順次通知する意向を伝えられた。市と県は残る計21人についても、黒い雨を浴びた地点を詰めるなどして近く判断するとみられる。

 黒い雨をめぐっては、国が指定する「第1種健康診断特例区域」(大雨地域)で被害に遭った当時の住民たちは健康診断費が無料となる受診者証を交付され、特定の病気を患えば、被爆者健康手帳を取得できる。一方、区域外の被害者には援護がない。県や市などは区域を現行の約6倍に広げるよう求めたが、国は2012年に「科学的根拠に乏しい」として見送った。

 これに対し、同協議会は14年10月に集団訴訟の方針を決め、71人が参加。区域外で黒い雨に遭った影響でがんなどを患い、被爆者援護法で「身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と定める「3号被爆」に該当すると主張し、ことし3~7月に被爆者健康手帳の交付を順次申請していた。

 訴訟は制度上、県と市を相手取るとみられる。協議会の高野正明会長は「区域拡大を国に迫る最後の手段として司法に訴える」としている。

(2015年9月3日朝刊掲載)

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