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電気自動車と太陽光発電による「燃やさない文明」の提言

東京大総長室アドバイザー 村沢義久氏  中国経済クラブ(高橋正理事長)は21日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開き、東京大総長室アドバイザーの村沢義久氏が「電気自動車と太陽光発電による『燃やさない文明』の提言」と題して講演した。太陽光発電と電気自動車(EV)の普及により、2050年には総電力量の50%を再生可能エネルギーで賄えるとの見通しを示した。要旨は次の通り。(永井友浩)

 福島第1原発事故でエネルギー政策の見直しを迫られる中、日本は2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比で80%削減しなくてはいけない。蓄電池を備えたEVと太陽光発電の普及が鍵となる。

 野田佳彦首相は「原発の新設は困難」としており、現在30%の原子力比率を50%に高めてCO2を削減する原子力大綱は見直さざるを得ない。CO2排出量の30%を占める火力発電も減らす必要がある。

 代替の最有力は太陽光発電だ。サハラ砂漠の面積の5~10%で世界の全エネルギー消費量を賄える潜在力がある。脱原発を掲げるドイツでは08~10年の2年間で約1100万キロワット増設し、風力と合わせた発電量は約10%を占める。日本は1%だ。

 課題はコスト。日本の1キロワット時当たりの電力コストは約40円と家庭向けの電気料金より約16円高い。しかし大量一括購入でコストが下がれば、加速度的に普及するだろう。5年以内に電気料金と同額の1キロワット時当たり約24円になると推測している。

 CO2削減のもう一つの鍵はEVの普及だ。EVが各家庭に広まれば、昼間しか発電できない太陽光発電の短所を補い、既存の発電所の稼働を抑えられる。試算では20%のCO2削減が期待できる。

 EV普及の課題もコストだが、モーター、バッテリー(蓄電池)、コントローラーの主要3部品があればガソリン車を改造して100万円程度で組み立てられる。年100台改造する拠点が全国に1万カ所あれば1兆円産業の誕生だ。

 自動車メーカーを頂点としたピラミッド型の産業構造が崩れ、各地の町工場、ガソリンスタンド、整備工場などが新ビジネスに参入。コストの課題も予想以上の速さで解決するだろう。国内の車は約7500万台で、年100万台ペースのEV改造は実現不可能な数字ではない。  50年には、太陽光発電とEVの普及で総電力量の50%を再生可能エネルギーで賄える見通しで、日本はCO2削減で世界の手本となれる。この技術を世界に広げれば、エネルギー安全保障問題と地球温暖化問題も解決の道に向かうだろう。

(2011年9月22日朝刊掲載)

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