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被爆兵供養 玉造に地蔵 有志建立 広島から移送「後世に」

 広島で被爆し、広島第一陸軍病院の玉造分院に移送され亡くなった陸軍兵を供養する地蔵菩薩(ぼさつ)が、松江市玉湯町の玉造温泉街の一角に建立された。地元住民たちの建立委員会が23日、開眼の法要をした。

 湯薬師堂敷地内に建てられた地蔵菩薩は高さ約2・4メートル。建立を呼び掛けた新宮承紀さん(89)=同町=たち6人が除幕し、住職が読経した。兵士たちが水を求めながら亡くなっていったことから、地蔵菩薩脇の鉢には水を満たした。

 新宮さんの調査によると、被爆兵約200人が山口線経由の貨物列車で移送されて来た。手の施しようもなく亡くなった人も多かったが、名前など詳しいことは不明という。

 新宮さんは、1944年9月から45年3月まで、陸軍技術少尉として広島にいたが、8月の終戦は北九州で迎えた。松江に戻り、亡くなった被爆兵の話を聞いたという。「自分も被爆していたかもしれない。同じ立場にあった人間として、申し訳ない気持ちでいっぱいだった」と振り返る。

 終戦60年の2005年、「せめて供養をしたい」と建立計画をスタートさせた。新宮さんは「多くの人に供養してもらい、玉造で被爆兵が亡くなったという事実を後世に伝えられたら」と話していた。(前岡愛)

(2011年9月25日朝刊掲載)

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