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上関町長選 推進派現職が当選 原発建設 逆風変わらず

中電は意欲 国の方針注視

 原子力発電所の建設計画に推進の立場をとる現職が当選した山口県上関町長選。中国電力は上関原発の建設推進にあらためて意欲を示す。ただ中断したままの準備工事の再開は見通せず、原発の新設について国の方針も示されていない。地元の民意があっても建設が困難な状況に変わりはない。

 「豊かな町づくりに向けた町民の期待に応えるため、より安全な発電所づくりに最大限取り組む」。選挙結果が判明した25日、中電の上関原発準備事務所はあらためて建設推進に意欲を示した。引き続き地元住民に対し、原発への理解を求めていく方針だ。

 苅田知英社長は福島原発の事故後も「安全確保を第一に原子力の開発を進める」と繰り返し強調していた。最大のよりどころとなる地元の民意は建設推進を維持したものの、計画の前進は難しい。

 福島の事故を受け、予定地の埋め立て工事は中断が続く。福島の事故が収束していないことなどから中電は「再開の見通しは示すことができない」とする。原子炉設置許可に向けた原子力安全・保安院の1次審査も事故を機に中断したまま。保安院は「事故の収束を優先している。再開は未定」としている。

 さらに山口県の二井関成知事は埋め立て免許の延長を現状では認めないとの認識も示しており、手続き面で多くのハードルが残る。

 計画を左右する最大の要素は国の方針だ。野田佳彦首相は「原発新設は困難」と表明。一方で枝野幸男経済産業相は上関原発について「さまざまな状況を総合的に判断し、地元の皆さんとも意見交換する上で結論を出したい」と述べた。

 国が原発の新規立地を認めない場合、「従わざるを得ない」(苅田社長)。国の方針待ちの様相を呈す中、中電は「福島の事故を踏まえた安全対策を計画に反映させるなどし、地元の理解を得る活動を続ける」と従来の立場を崩していない。(山本和明)

(2011年9月27日朝刊掲載)

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