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社説・コラム

天風録 「君子は党せず」

 大勢がおしゃべりに興じるパーティー。音楽がかかり声も大きくなる。騒々しい中、周囲の音は聞き取りにくくなるが、自分に関するひそひそ話や気になる話題はなぜか遠くからでも耳に入る▲「カクテルパーティー効果」と呼ぶらしい。響いてくる声を無意識のうちにより分けて、関心ある話だけ聞くさまを指す。国会の場でこの現象が広がっているとしか思えないのは残念だ▲緊迫の度合いは増すばかり。安保法案の大詰めで参院の中央公聴会が開かれた。その名の通り国民の声を広く聴くはずが、政権の耳には都合のいい話しか入らなかったようだ。「違憲」の叫びは聞こえないふりできょう限りの審議打ち切りを決めた▲東西を問わず言葉は意味深だ。英語のパーティーに党の意味もあるのは仲間に分かれてわいわい論じるからだろう。片や論語をひもとけば「君子は党せず」。かの孔子は仲間びいきを戒めた。聞こえのいい内輪の声だけ優先させれば政治はどうなる▲まだまだ議論は足りない。もし強行採決されれば、これまで以上に声が上がる―。公聴会に出た大学生の言葉だ。さまざまな党の声や、国民の懸念をカクテルさながらにミックスできないものか。

(2015年9月16日朝刊掲載)

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