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戦場へ「政治の覚悟は」 呉・岩国など基地の街に不安・懸念 「命令なら行くだけ」 安保法成立へ

 陸海自衛隊の基地や施設のある呉市、江田島市、広島県海田町、岩国市では、隊員や家族が安全保障関連法案をめぐる大詰めの与野党攻防を息を詰めて見守った。隊員の多くは「命令なら行くだけ」と受け止めるが、不安や懸念の声も漏れる。政治への厳しい見方、注文もあった。

 18日早朝の海自隊呉基地(呉市昭和町、幸町)。隊員たちはいつものように基地の門をくぐり、それぞれの職場へ向かった。40代男性隊員は「国の判断に一隊員がどうこう言うことはない。どんな仕事でも職務を全うする」。

 第1術科学校や呉弾薬整備補給所がある江田島市。30代男性隊員も「いろんな議論があるのは理解しているが、粛々と任務を遂行するだけ」と言い切る。海田町の陸自隊第13旅団のベテラン隊員も「淡々と任務をこなす」と平静だった。

 とはいえ不安もよぎる。法整備により任務の種類と場所は格段に広がる。集団的自衛権の行使が可能になり、国連平和維持活動では武器使用基準も緩和。30代男性隊員は「頭では任務と分かっていても敵に銃を向けるという実感は湧いてこない。戦争をしたくないのは隊員も同じ。新たな法もないに越したことはない」。

 30代男性隊員は「任務拡大を厭(いと)うわけではない。最大の不安は存立危機事態、重要影響事態に該当するか否かを判断、決定するのは政治家だという点だ。最高度の判断を下す覚悟があるのだろうか」と疑問を投げかける。衆参両院での審議を聞いていて思いを強くしたという。「やりとりは軽く聞こえた」と手厳しい。

 隊員の家族はもどかしい思いを抱える。30代女性は「夫から法制の話は出ないし、こちらもしない。本来危険と隣り合わせの仕事だから。いざという事態になれば現実味が出るのかもしれない」。

 米海兵隊と海自が共同使用する岩国基地。夫が海自岩国基地勤務の40代女性は「現場に赴く事態になれば不安だろう。平和を祈ることしかできないし、リスク増大を否定する政府を信じるしかない」と祈る。夫が陸自勤務の40代女性も「災害出動は不安はないけど、海外にはあまり行ってほしくない」と言う。

 呉基地の30代男性隊員は「親には自衛隊に入った以上は職務を全うしろと言われている。しかし子どもがかわいくない親はいないだろう」と案じる家族に思いをはせていた。

(2015年9月19日朝刊掲載)

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