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社説・コラム

天風録 「世界は家族」

 世界中を感動の渦に巻き込んだ英語の歌を思い出す。「ウィ・アー・ザ・ワールド」。故マイケル・ジャクソンをはじめ米音楽界のきら星が手を携え、リレーして歌うメーキング映像も心動かされた。ことし発売30年になる▲アフリカの飢餓と貧困を救うチャリティーソングの訴えは今も色あせない。世界が家族に。子どもの命のため手を差し伸べる時だ。誰かがどこかで変化しないと―。ただ歌と一緒にその志が受け継がれてきただろうか▲開幕した国連総会では途上国の貧困解消が再び焦点となる。いま各国が資源の争奪戦に目の色を変えるアフリカにしても、富める者との格差はむしろ広がる。何とかしようと日本がもっと先頭に立つべき問題のはずだ▲安保国会に強引に片を付けた首相の関心がそこにあるかどうか。来週に国連演説がある。きのう「今後も積極的に平和外交を」と口にしたが、武力行使を拡大する法律を世界にどう説明するかで頭がいっぱいになろう▲地球上に戦火と混乱が広がる。飢えて苦しむ人たちは、力には力では救えまい。「ウィ・アー・ザ・チルドレン」と声を一つにした歌手たちのように、助けを待つ幼いまなざしにこそ寄り添いたい。

(2015年9月20日朝刊掲載)

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