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社説・コラム

安保法成立 中国地方の国会議員に聞く

 安全保障関連法が参院本会議で可決、成立した。受け止めや同法をめぐる課題などについて中国地方選出の国会議員4人に聞いた。(城戸収、清水大慈、藤村潤平)

自民党 寺田稔氏(衆院広島5区)

歯止め策の充実を

 政府・与党は、この法が決して戦争を仕掛けるものではないことをしっかり説明していかなければならない。仮にそうなら、衆院通過の際に中国や韓国が真っ先に反発したはずだ。否定的な反応はない。個別的自衛権では一対一の対立が深まるだけだが、集団的自衛権は戦争を回避したり、終結させたりする効果があることもアピールすべきだ。

 ただ自衛隊派遣の歯止め策については、さらに充実させる必要がある。今のままでは政府側の自由度が高い。次世代の党など野党3党と国会の事前承認の厳格化で合意したが、十分とはいえない。集団的自衛権の行使の前提となる新3要件を満たしているかどうかは、政府に立証責任があることを明確にすべきだ。

民主党 江田五月氏(参院岡山)

野党結束で対抗へ

 安保関連法が成立しても、諦めてはいけない。集団的自衛権の行使容認が、法規範として安定的に定着したわけではないからだ。例えば命令に背いた自衛官が処分され、処分の取り消し訴訟が起きた場合、同法が違憲と判断される可能性はある。有権者が非自公政権を実現させれば、集団的自衛権について従来の解釈に戻せるかもしれない。

 野党再編ありきではないが、野党が結束し、法の改正、廃止を含め、安倍政権に対抗する政策や、別の政権の選択肢を国民に示さねばならない。

 政府の裁量で武力行使が拡大する恐れがある。権力側の恣意(しい)的な運用を許さないよう、政治の場だけでなく、社会全体で目を光らせなければならない。

公明党 斉藤鉄夫氏(衆院比例中国)

自衛隊の安全議論

 安保関連法は憲法9条の枠内であり、「戦争防止法」だ。成立によって日本が戦争に巻き込まれる可能性は一層低くなったと言える。これで9条を変えようという動きもなくなると思っている。

 法制定で自衛隊の海外での活動範囲は広がる。今後、他国軍への後方支援などに当たる自衛隊員の安全確保策を詰める必要がある。例えば、部隊長がどの程度、撤退判断の権限を持つのかなど、細かい部分まで検討しなければならない。これは政府の責任だ。

 反対デモが広がっているが、明らかな誤解からくる主張もある。政府・与党は安保関連法について今後も丁寧に、しっかりと説明し、国民に理解してもらう必要がある。

無所属 亀井静香氏(衆院広島6区)

危機感を次世代に

 安倍政権は、時代錯誤の安保関連法を強引に成立させたことで、国家の基本をゆるがせにしてしまった。米国の戦争を海外で手伝うことは絶対に、日本の防衛力強化につながらない。

 自衛官のリスクも、ろくに審議されなかった法律だ。実際に運用することはできないだろう。強引に集団的自衛権の行使を認める解釈改憲をした、という事実だけが残る。こんな法整備の前に、日米の協力体制や日米地位協定を再検討すべきだ。

 安保関連法をめぐって、国民の間に危機感が充満している。では、その危機感をいつまで保つことができるだろうか。国家の運命について、子や孫の世代に対する責任感が、国民に問われている。

(2015年9月20日朝刊掲載)

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