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原爆美術展 開催困難に 東京・目黒 経費不足で来年度も

 東日本大震災や福島第1原発事故と「イメージが重なり、冷静に見られない」との理由で、今春の開催が見送られた東京・目黒区美術館の原爆美術展が、今度は、区の財政難を理由に来年度の開催も危ぶまれていることが13日、分かった。

 同展は「原爆を視(み)る1945―1970」と題し、原爆に関する絵画や写真、漫画、紙芝居など約600点の出展を計画。4月9日~5月29日の会期だったが、震災を受け、見送った。直後から開催を望む声が電話や電子メールで多数寄せられ、「来年度の開催へ動いている」(田中晴久館長)と説明していた。

 館を運営する目黒区芸術文化振興財団によると、財政難の区が事業見直しに乗りだし、例年3千万円あった特別展の経費を来年度は1千万円に減らす方針を通知してきた。来年度は既に、他館も巡回するフランス人デザイナーの特別展を予定していて、田中館長は「これ以上、特別展ができない。原爆美術展は何とか実現したいと増額を求めているが、現状は厳しい」と頭を抱える。2013年度以降の開催も見通しはたたないという。

 絵画や写真約120点を貸し出すはずだった原爆資料館(広島市中区)学芸担当の大瀬戸正司主任は「お金の問題で中止になるのは残念。助成金や協賛金を募る方法もあるのでは」と話す。

 自作の出品を依頼されていた広島市東区の画家入野忠芳さん(71)は「今こそ考えるべきテーマの企画。区の方針は信じられない」と憤っている。(道面雅量)

(2011年10月14日朝刊掲載)

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