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核軍縮・平和構築へ力 ひろしま構想案まとまる

 広島県が進めている「国際平和拠点ひろしま構想」の策定委員会(座長・明石康元国連事務次長)は17日、核兵器廃絶と平和構築に向けた人材育成や研究機能の拠点を目指す構想案をまとめた。

 広島市南区であった最終会合には、明石氏や川口順子元外相、湯崎英彦知事たち策定委員と、広島大や広島市立大の研究者たち作業部会メンバーの計13人が出席。非公開で約7時間議論し、終了後、策定委員が会見した。

 構想案は、核軍縮のプロセスへの積極的な関与▽平和構築への貢献―を柱に据える。具体的には、核拡散防止条約(NPT)再検討会議など核兵器廃絶に向けた世界の取り組みの検証や、平和活動に関わる人材の育成などを挙げた。

 こうした取り組みを実現するため、国内外の研究施設の集積や資金調達の仕組みづくりの必要性に言及した。

 会合ではこのほか、平和構築に関する定期的な国際会議の広島開催を求める意見も出たという。明石氏は「被爆地広島の果たすべき役割について幅広い提言がまとまった。国際社会でどう受け止められるかがこれからの焦点だ」と述べた。

 策定委は細部を詰め、10月中に構想をまとめる。湯崎知事は11月上旬、米国を訪れ、国連の潘基文(バンキムン)事務総長や米政府機関の関係者たちに構想実現への協力を求める。

【解説】 具体的施策 賛同得る鍵

 被爆地広島が核兵器廃絶や平和構築に向けて果たすべき役割をまとめた広島県の「国際平和拠点ひろしま構想」案。この構想が国内外で求心力を得るには、県は具体的な施策と実現に向けたプロセスを明確に打ち出すことが不可欠だ。

 構想策定委員は「被爆から復興を遂げた広島は世界を引きつける力がある」と口をそろえる。構想も広島が核軍縮や紛争地域の復興などに貢献する「世界平和の拠点」となるよう提言する。

 しかし、国内外から広く人材や資金を集める具体策は現段階で見えない。世界が賛同できる取り組みを提示できなければ構想は「絵に描いた餅」になる。

 広島市との連携と役割分担も課題だ。広島市長が会長を務める平和市長会議のネットワークなど、これまでの蓄積を生かして「オール広島」で挑む姿勢を示す必要がある。

 何より被爆者をはじめ、県民の共感を得なければ構想は力を持たない。世界の人々に響く構想を発信するには、足元の機運を高めることが前提になる。(加納亜弥)

(2011年10月18日朝刊掲載)

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