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石見タイムズ 復刻 1947年、民主主義を掲げ 浜田で創刊  来春までに全11巻と別巻

過酷な戦争体験 連載も

 戦後2年目の1947年7月、浜田市で創刊された週刊新聞「石見タイムズ」の復刻出版が進んでいる。最盛期で部数七千の地域紙ながら、国民主権や男女同権、反戦平和を掲げて地方の民主化を志した紙面に、京都市の出版社が着目。紙齢の前半に当たる58年8月までを全11巻と別巻にまとめ、来年春まで順次刊行する。(道面雅量)

 同紙は、46年7月創刊の「浜田新聞」が前身。タブロイド判、4~8ページを基本とし、島根県西部を取材、販売エリアとした。

 石見タイムズへの改題創刊をリードし、その論調を担ったのは、戦地から復員し27歳で主筆に就いた小島清文さん(1919~2002年)。88年に東京で「不戦兵士の会」をつくり、後半生は戦争の語り部として知られた。

 「民主主義を地方でこそ徹底しよう、という小島さんの精神と行動力に打たれた」と、復刻を決めた「三人社」代表の越水治さん(64)は言う。小島さんは社説などで、基本的人権や政治参加の意義を繰り返し説いた。男女同権へ向けた座談会なども開き、詳報した。

 フィリピンの戦場で飢えと熱病の死線をさまよった末、部下と投降した体験も63回にわたって連載。「理屈ではなく実体験で、日本の戦争指導者を鋭く告発した」と越水さん。戦後70年も意識し、昨年末から配本を始めた。

 越水さんに復刻を勧めた島根県立大の井上厚史教授(57)は「地元の年配の方から石見タイムズの思い出をよく聞かされてきた。この地に確かにあった戦後民主主義の芽吹きに今、光が当たるのは意義深い」と話す。

 同紙は73年6月に休刊した。復刻版は、浜田市立中央図書館にある原本のデータを活用し、小島さんが編集現場にいた前半期と浜田新聞時代を収録する。限定60部を刊行。時期ごとの3巻セットが9万7200円、全巻で38万8800円。

(2015年10月2日朝刊掲載)

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