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セシウム除去 福島で実証 広島国際学院大教授ら

 微生物を利用したセシウム回収技術の研究を進めている広島国際学院大(広島市安芸区)工学部長の佐々木健教授(62)のグループが、福島市内のプールのヘドロから、福島第1原発事故で放出されたとみられる放射性セシウムを除去する実験に成功した。佐々木教授は「土壌でも活用できる可能性が高い」としている。(和田木健史)

 9月13~26日に福島市内の公立学校のプールで3回にわたってヘドロを採取。それぞれに微生物を入れ、3日間の数値を測定した。その結果、毎時14.54~12.04マイクロシーベルトの放射線量が同4.10~2.60マイクロシーベルトまで減少。実験中にプール周辺で計測された平均同1.20マイクロシーベルトを差し引くと最大で89.4%を除去できた計算になるという。

 微生物はマイナス電気を帯びた粘着物質を出す植物系の光合成細菌。プラス電気を持つセシウムなど重金属のイオンを引き寄せる性質がある。セシウムには植物に必要なカリウムと似た性質があり、カリウムとセシウムを一緒に回収した可能性もあるという。

 実験は細菌をアルギン酸、カルシウムと混ぜて直径約2センチの粒状にして使用した。放射性物質を吸着後、焼却すると容量は50分の1以下、重さは100分の1以下の灰になる。焼却時に放射性物質は拡散しないという。

 佐々木教授によると、放射性物質の除去のバイオ技術による実証は初という。佐々木教授は「コストがかからず中間処理も比較的容易。土壌も水と混ぜた状態にすれば除去できる可能性が高い」と説明する。

 実験の結果について、立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)は「注目すべき成果だ。吸着のメカニズムが解明され実用化できれば、福島にとって朗報になる」としている。

微生物によるセシウム回収
 広島国際学院大の佐々木健教授の研究グループが、微生物によるウランや重金属の回収技術を研究。福島第1原発の事故後、管工機材商社の大田鋼管(広島市西区)グループとの共同研究で、微生物を利用してセシウムを回収できるか実験し、6月に技術を確立した。

(2011年10月26日朝刊掲載)

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