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ヒロシマ復興の調べ 再び 原爆題材 アールトネンの交響曲第2番 広島で来月 60年ぶり演奏

 原爆の惨禍からの復興を描いたフィンランド人作曲家エルッキ・アールトネン(1910~90年)の交響曲第2番HIROSHIMAが11月、60年ぶりに広島市で演奏される。長く眠っていた楽曲を広島の音楽関係者が発掘。北欧から被爆地へ寄せた調べが、被爆70年の節目によみがえる。(余村泰樹)

 交響曲第2番は、広島の惨状に胸を痛め、憤りを抱いたアールトネンが49年に作曲。関西交響楽団(現大阪フィルハーモニー交響楽団)指揮者の朝比奈隆が53年の欧州訪問の際、アールトネンから楽譜とともに広島での演奏を託された。朝比奈率いる同楽団は55年8月、広島市公会堂で昼夜2回公演。約5千人が聴いたという。

 7部構成で約30分。平和だった街が原爆で廃虚となり、そこから復興する姿を表現する。日本初演の55年以降、国内では演奏記録がなく、ヒロシマを題材とした楽曲を掘り起こす「ヒロシマと音楽」委員会が2008年から調査。大フィルの倉庫で楽譜を確認した。

 音楽史を研究する能登原由美委員長(44)は「ヒロシマを扱った交響曲で確認できる最初の曲。一般音源もなく再演の歴史的意義は大きい」と喜ぶ。

 演奏会は広島市の被爆70年事業の一環で11月16日、中区のJMSアステールプラザで開く。広島交響楽団で第3代音楽監督を務め、現在は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者の高関健がタクトを振り、広響が演奏する。

 後半には、1985年に広島青年会議所の委嘱で團伊玖磨が作曲した交響曲第6番HIROSHIMAを披露。音戸の舟唄や英国の詩人が広島に寄せた詩も取り入れながら、広島の再生を描き出す。

 演奏会でプレトークを務める能登原委員長は「フィンランド人と日本人との視点で書かれた二つの交響曲からヒロシマの歴史を振り返ることができる貴重な機会」と話している。

 JMSアステールプラザの演奏会は午後6時45分から。S席4千円、A席3千円、学生1500円。中国新聞社など主催。アステールプラザTel082(244)8000。

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 アールトネンの交響曲第2番は、三原市の市芸術文化センターポポロで、12月6日午後4時から開催される大フィルの特別演奏会でも再演される。指揮は井上道義。中国新聞備後本社など主催。ポポロTel0848(81)0886。

(2015年10月10日朝刊掲載)

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