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首長や議会 厳しい声 島根原発虚偽記録 中電 報告書修正 知らせず

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録問題で、9月に原因と再発防止策を報告書にまとめた中電が、立地自治体の松江市や島根県などの議会、首長から厳しい批判にさらされている。6月末の発覚当初に公表した事実が中間報告がないまま変更されたことや、原因究明のあいまいさなどを問題視。2010年の点検不備問題の記憶が今も強く残る地元では、中電への不信感は根強い。(川井直哉)

 問題の発覚当初、中電は30代の担当社員が機器の調整をメーカー代理店に依頼するのを忘れていたため、書類を捏造(ねつぞう)したとしていた。ところが、報告書では担当者が発注伝票などの正式な手続きをしないまま、メールで機器3台の調整を依頼していたことが発覚。そのうちの2台が修理が必要として返送されたが、そのまま取り付けて稼働させた上、書類を捏造したと修正した。

「ルーズな会社」

 今月7日の県議会総務委員会で委員の一人は、事実関係が変わった時点で速やかに明らかにしなかった中電を追及。「県民はその後の対応も見ている」と迫った。参考人として出席した中電の岩崎昭正常務は「ある程度の事が分かった時点で、まとめて知らせようと考えた」と弁解した。

 委員会はその後、同様に参考人として発言を求められた原子力規制庁の担当者が「(今回の問題が)原子力安全に及ぼす影響は軽微」と述べた時点で、風当たりはさらに強まった。「ルーズな会社に原発を扱わせていいのか。規制庁が軽微と表現するのはどうか」。議長経験もある自民党の委員が強い口調でただした。

 原発30キロ圏内の出雲市の長岡秀人市長も2日の会見で「中間的な報告がなかった。感覚がずれている」と批判をあらわにした。

 さらに、担当社員が不正行為を続けた根本的な原因について、「本人に聞いても分からない」とする中電側の言い分をいぶかる声もある。松江市の松浦正敬市長は9月25日の会見で「なぜ起こったのか、もう少し突っ込んだ分析が必要だ」と述べ、詳しい説明を求める方針を示した。

説明チラシ配布

 今月6日、中電は住民向け説明チラシを新聞折り込みで30キロ圏内の6市で25万枚を配布した。だが、10年に1、2号機で発覚した機器の点検不備問題の際には、中間報告の時点で住民説明会を開催。松江市議会や県議会では、中電による説明会を求める声が上がる。同市議会の島根原発対策特別委員会の立脇通也委員長は「5年前と大きく変わらない再発防止策の内容では、市民が納得するのは難しい」と注文も付ける。

 県の幹部は「地元の不信感について、中電の認識は甘いと言わざるを得ない」と指摘する。一方で溝口善兵衛知事は、規制委の判断を重要視。「規制委の説明をよく聞いて県としての結論を出していきたい」としている。

低レベル放射性廃棄物の虚偽記録問題
 中国電力島根原子力発電所で、低レベル放射性廃棄物をドラム缶の中に固定するモルタルの水量計について、古い記録をコピーして作った虚偽の記録を担当社員が提出していた。日本原燃の監査で原本を求められ発覚。担当任せだったため、2013年8月から1年11カ月の間、会社は不正を把握できなかった。この問題について原子力規制委員会は8月、原子炉等規制法に基づく保安規定違反(監視)と判定した。

(2015年10月12日朝刊掲載)

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