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原告ら評価と落胆 岩国爆音訴訟 国に賠償命令 全国の「基地」連携誓う

 米海兵隊と海上自衛隊が共同使用する岩国基地(岩国市)の騒音被害に、初の司法判断が下された。15日に言い渡された岩国爆音訴訟の判決。米軍機などの騒音に苦しんできた原告や支援者は、5億5800万円の損害賠償を認めた内容を評価する一方、早朝・夜間の飛行や空母艦載機移転の差し止めが退けられたことに落胆を隠さなかった。(久行大輝、滝尾明日香)

 2010年に滑走路が沖合に約1キロ移設された岩国基地。山口地裁岩国支部での判決言い渡し後、原告は市福祉会館で報告集会を開いた。約130人を前に、原告団長の津田利明さん(69)=同市桂町=は「騒音被害の違法性について移設前も後も認めたことは非常に良かった」と前向きな受け止めを語った。

 一方、米軍機などの飛行と17年ごろに予定される空母艦載機移転の差し止めが退けられたことに、批判の声が上がった。原告の中川茂人さん(77)=同市由宇町=は「静かな岩国になると期待していた。残念だ」と悔しさをにじませた。

 集会には米軍厚木基地(神奈川県)や嘉手納基地(沖縄県)など全国の騒音訴訟の原告、弁護団も駆け付けた。第3次嘉手納基地爆音訴訟の神谷誠人事務局長(54)は「安倍晋三首相のお膝元であり、日米安保体制の中核である岩国基地で原告全員の被害を認めさせたことは素晴らしい」と力を込め、連携を誓った。

 原告団は控訴を検討している。津田さんは「静かで安全な岩国を子や孫に残したいと闘ってきた。それにつながる判決が欲しかった。これで終わりになりそうにない」と話していた。

<岩国爆音訴訟の争点表>

争点
①原告(基地周辺住民)
②被告(国)
③山口地裁岩国支部判決

騒音被害は受忍限度を超えるか
①受忍限度を超えて違法。原告はうるささ指数(W値)75以上の指定区域に住んでおり、健康、生活の両面で被害が発生している ②指定区域のW値は近年の現実の騒音状況を反映したものではなく、受忍限度を超える騒音にはさらされていない ③人間らしい生活を営む上で重要な利益の侵害であり、受忍しなければならないような軽微な被害ではない

滑走路沖合移設で騒音はどうなったか
①軍用機の飛行形態に変化があり、騒音が広範囲に広がっている。低周波音の影響もある ②騒音は大幅に軽減し、根本的な解決が図られた ③一部地域を除き、各指定区域のW値の区分を一つ下げる程度の騒音の減少があったが、なお相当に強い騒音にさらされている

米軍機と自衛隊機の飛行差し止めの可否
①人格権や平穏生活権が侵害されている上、空母艦載機移転で騒音被害は格段に高まる。差し止めの必要性がある ②基地には高度の公共性があり、認めるべきではない。米軍機については国の支配の及ばない「第三者行為論」を最高裁判例が認めており、訴えは不当 ③米軍機については国の支配の及ばない第三者行為の差し止めを請求するもので理由がない。民事訴訟による自衛隊機の請求は不適法

(2015年10月16日朝刊掲載)

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