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参加の米記者 ヒロシマ再取材 被爆地招請「アキバ・プロジェクト」 「70年の節目」 ウェブ発信へ

 1986年に広島国際文化財団の米地方紙記者広島・長崎招請計画(アキバ・プロジェクト)に参加し、両被爆地を訪れたジョセフ・コープランドさん(66)=米国ワシントン州シアトル=が、広島市を再び訪れ、被爆者や広島県被団協(坪井直理事長)を取材した。自身が勤めるインターネットニュース「クロスカット・ドットコム」や、自らのウェブサイト「ヒロシマ・ストーリーズ」に記事を掲載する。(金崎由美)

 シアトルの新聞社で論説委員を務めていたが、新聞は休刊になった。その直後の2009年、フルブライト奨学金を受け、広島市に3カ月間滞在。翌年から現在のニュースサイトに勤務している。「被爆70年の節目に被爆地の継続取材を」と今回の再訪を決めた。

 6年前にも取材した岡田恵美子さん(78)=東区=と原爆資料館(中区)で再会。証言活動に込める思いや、最近の世界の核状況について語り合った。

 コープランドさんは「オバマ米大統領への期待はまだあるか」と質問。岡田さんは「決して簡単ではなくても、心の中では『広島に行きたい』と思っているはず。この地で核兵器廃絶への決意を新たにしてもらう、という希望はまだ持っている」と答えていた。

 世界各国に招かれ、体験を証言する中で感じたことにも話が及んだ。岡田さんは「アジアの人と話すと、自らの被害を語るだけでは心を開いてくれないと気付かされる」と指摘。「日本の戦争中の行いについても語るようになった。世界中の紛争、貧困や差別―。子どもを傷つけ、平和を妨げる課題に被爆者として関心を持ち続けたい」と語った。

 米国の現状について「原爆投下を正当化する論調が根強いものの、変化も出始めている」とコープランドさん。「岡田さんら被爆者の声を通して、世界から核兵器の脅威をなくすことの重要性を伝えたい」と強調した。

 取材後には、「岡田さんの訴えの説得力は、世界で起こっていることを懸命に学ぶ姿勢にも裏打ちされている。頭が下がる思いだ」と話していた。

米地方紙記者広島・長崎招請計画
 原爆被害の実態とともに、核兵器廃絶と世界平和を願う被爆地の心を米国民に伝えてもらおうと、広島国際文化財団が1979年から88年まで、米国の地方紙記者ら34人を広島・長崎両市に招いた事業。「アキバ・プロジェクト」と呼ばれた。当時、米タフツ大准教授だった秋葉忠利前広島市長が提唱したことに由来する。

(2015年10月19日朝刊掲載)

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