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広島大仏「里帰り」企画 原爆ドーム近く→奈良の極楽寺移設 特別公開へ実行委結成 3年以内目指す

 原爆犠牲者を慰霊するために戦後しばらく原爆ドーム(広島市中区)近くの寺に置かれ、今は奈良県安堵町の極楽寺にある「広島大仏」を広島で特別公開する計画が始まった。奈良の住民団体が、被爆者や遺族の辛苦を受け止めた仏像の「里帰り」で平和への願いを新たにしようと企画し、3年以内の開催を目指す。関係者が21日、準備のため広島市を訪れた。(奥田美奈子)

 広島大仏は金箔(きんぱく)を施した高さ約4メートルの阿弥陀(あみだ)如来坐像(ざぞう)。市民の心のよりどころとして1950年、西蓮寺(中区)に置かれた。55年ごろに場所を移してからは所在不明になっていた。寺の仏像について「広島の大仏」とだけ聞いていた極楽寺の田中全義住職(29)が「ヒロシマの記録」(中国新聞社)に登場する広島大仏と似ていることに気付き、専門家に確認を依頼。2011年、広島大仏のお墨付きをもらったという。

 極楽寺は聖徳太子ゆかりの古寺とされ、広島大仏を寺外で開帳する「出開帳(でがいちょう)」は初めて。被爆70年の節目を迎えた今夏、広島での出開帳を願う声が安堵町で広がり、住民たち約20人が実行委員会を結成した。日程や会場は未定だが、18年までの開催を目指している。

 広島での行事運営などの協力者や仏像の運搬資金を募るため、田中住職と実行委メンバー2人が広島市を訪問。この日は中区の平和記念公園の原爆慰霊碑前で読経し、集まった広島の知人たちに計画を説明した。23日まで滞在し、ゆかりの寺や商店などを訪ねて協力を求め、会場候補を探す。

 田中住職は「被爆直後の広島を見守った大仏様は、平和の大切さを後世に伝える新たなシンボルになるはず」と強調。「広島の皆さんと一緒に手を合わせ、思いを共有する場をつくりたい」と話している。23日も午前10時から慰霊碑前で法要を開き、計画を紹介。専用ホームページを年内に開設するという。

(2015年10月22日朝刊掲載)

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