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中国地方の野菜人気 原発事故後 関東からネット購入急増

 中国地方産の野菜をインターネットを通じて購入する人が、東日本で増えている。福島第1原発事故の後、親や幼稚園が子どもに食べさせる野菜として、同原発から遠い西日本産を取り寄せている。放射性物質に対し「自衛策」に走る背景には、国の安全基準値への不信感がある。(三浦充博)

 「多くは小さな子どもを持つ母親。放射性物質が心配と切実に訴える」。野菜などの仲卸、寺勝青果(広島市西区)の寺田夏月取締役(31)が明かす。

 同社のネット通販は主に小売店向けだったが、4月ごろから関東地方などの個人客が増え、注文が倍増した。広島市中央卸売市場(同)の広島、島根県産などの野菜を詰め合わせて送る。東京都港区の幼稚園からは月数回、園児の昼食の材料の注文がある。

 野菜をネット通販するマルフク(福山市)でも、週20~30件の注文が4月から約60件に急増。福山市や広島県神石高原町などの契約農家約50人が育てた大根、レンコンなどをセット販売する。寺岡徳尚社長(66)は「肥料の産地まで確認する客もいる」と言う。

 関東で野菜を宅配する会社、大地を守る会(千葉市)は5月以降、放射性物質を独自に検査し販売している。4~9月のネット通販の利用は前年同期の約2.3倍。広報担当の斎藤史恵さん(32)は「国の基準で大丈夫かという不信感が、特に乳幼児の親や妊婦に強い」と指摘する。

 食品の放射性物質の規制値を決める根拠として、内閣府食品安全委員会は10月「生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト以上で健康に影響がある」との目安を示した。さらに「小児は成人より感受性が高い可能性がある」と指摘。だが、子どもの具体的な規制値は示されていない。

 厚生労働省は事故後、食品の放射線量の暫定基準値を定めたが、甘さを指摘する声もあり引き下げられる方向。分かりにくく、揺れる基準が、親の不安を増幅させている。

 一方で、JA全農福島(福島市)の佐藤隆総務人事課長(53)は「出荷している野菜は国の暫定基準値を下回っている。冷静に判断してほしい」と要望。一律に東北の野菜を避ける動きを懸念する。

食品の放射性物質への規制
 福島第1原発事故を受け厚生労働省は、食品に含まれる放射性物質の許容数値を暫定基準値として決めた。放射性セシウムの場合、内部被曝(ひばく)の上限を年5ミリシーベルトとする前提で設定。穀類や野菜、肉、魚介類は1キロ当たり500ベクレルとしている。今後、上限を年1ミリシーベルトに引き下げる方針でいる。

(2011年11月17日朝刊掲載)

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