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原発防災 30キロ圏に拡大 松浦松江市長に聞く

全市民避難も想定 現実的な計画示す

 福島第1原発事故の発生から8カ月余り。未曽有の原子力災害は、防災対策の不備を浮かび上がらせ、中国電力島根原子力発電所の立地する松江市も揺さぶる。松浦正敬市長は「まず原発の安全対策を万全にした上で、現実的な避難計画を市民に示すことが重要」と強調する。今後の対応を聞いた。(川上裕)

 ―原発事故に備えた防災重点区域を原発30キロ圏内に拡大する政府の方針をどう受け止めていますか。
 30キロの根拠が分からない。風向きや地形は地域で異なる。原発ごとに避難先を確保するなど国は責任を持って対策を示すべきだ。

 ―市全域が30キロ圏内に入ります。どう避難計画をまとめますか。
 まず国と中電には万全な安全対策を求める。一方で、最悪の事態も想定し、全市民20万8千人の避難も考えていく。市内をブロックに分け、それぞれ避難先を決める。そこで家族も合流できる。現実的な計画を示さないと納得は得られない。

 ―県が策定している住民避難計画との擦り合わせも必要ですね。
 30キロ圏内の約46万人が一斉に避難することは、輸送手段を含めて現実的に難しい。原発に近く、被害が及ぶ危険性の高い住民から避難させる前提を大切にしてほしい。

 ―新たな防災対策の整備をどう進めますか。
 放射線の監視や被曝(ひばく)医療の充実に加え、避難道路の整備も欠かせない。原発と共存しなければならない立地自治体を国は責任を持って支援する必要がある。財源を優先的に回すのは当然といえる。それがなければ、原発なんか別の場所へ持っていってほしい。

原発の防災対策を重点的に充実すべき地域
 原子力安全委員会は、従来の原発から半径8~10キロ圏から30キロ圏に拡大し、緊急防護措置区域(UPZ)とする方針を決めた。島根原子力発電所(松江市鹿島町)では、島根、鳥取両県の6市が対象。さらに半径5キロ圏内を予防防護措置区域(PAZ)とし、重大事故の際、直ちに避難する地域とした。島根原発では松江市民約1万8千人が対象となる。

(2011年11月21日朝刊掲載)

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