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岩国市と県 売却合意 愛宕山先行 曲折も

 現時点で艦載機移転は認めないが、移転に伴う米軍住宅を建設する土地売却は進める―。岩国市の愛宕山地域開発事業跡地をめぐり、国に売却する方針を決めた山口県の二井関成知事と同市の福田良彦市長のトップ会談。矛盾をはらむ合意内容に協議後の会見では質問が相次いだ。(金刺大五)

 会見で二井知事は跡地売却は艦載機移転を事実上、容認するというマスコミの論調に対し、「艦載機だけではなく、地元は安心安全対策などいろいろな課題を抱えている。今、安易に容認せず、国に対する諸要望が実現できて初めて容認といえる」とした。

 しかし、跡地売却には市の艦載機の移転容認を条件としたのは知事自身。自ら掲げた条件を撤回した理由として、市長の意向尊重に加え、米軍普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は、艦載機移転を認めない県、市の基本方針を国に守らせる点を挙げ、現時点での移転容認は「得策ではない」と理解を求めた。

 一方、福田市長は会見で「意見を調整し、一定の方向性を出すことが今、求められている。いつまでも先延ばしする問題ではない。苦渋の選択だが、最善の選択でもある」と強調。跡地を売却しない場合、来春に解散する公社の多額の負債(3月末時点で241億円)を県市で肩代わりしないといけない財政事情をにじませた。

 県、市は売却問題について年内決着を図り、最終判断を国に伝える構え。だが、近く開会する双方の議会定例会での一部会派からの反発は必至。二井知事は「丁寧に説明し、理解をいただいた上で最終決定をしたい」、福田市長は「売却により、安心安全対策や地域振興策などその他の協議が停滞することはあってはならない。継続して国と協議していく」と力を込めた。

 日米合意された艦載機移転の目標年は2014年。それまでに普天間問題が解決するかはきわめて不透明な情勢の中、売却だけが先に決まる「合意」には今後、曲折も予想される。


「市の意向を尊重」「総合的に判断」 二井知事と福田市長

 二井知事と福田市長の協議後の会見の主なやりとりは次の通り。

 ―愛宕山跡地売却には市の再編容認が前提であることを今回、なぜ変えたのですか。
 二井知事 国が米軍再編関連施設用地として買い取る意向を示している以上、売却は市が再編を容認しないと筋が通らないと考えていた。しかし、再編全体で見ればいろんな問題があり、市に容認を求めることはどうかと考えた。もともと市の意向を尊重するのが基本方針なので、私の考えを撤回した。

 福田市長 再編問題は愛宕山用地を含め、総合的に判断する必要がある。売却が移駐容認や、先行移駐につながるものではないと認識している。

  ―艦載機移転の完了目標の2014年までに基本方針にそぐわない事態となった場合、売却を中止することも検討するのですか。
 二井知事 具体的な状況をみて判断する。基本方針はあくまで守ってもらわなければいけないという姿勢で対応していく。

 ―再編や艦載機移転を容認しなくても売却判断はできますか。
 二井知事 ええ、売ることはできる。

 ―優先すべきは赤字解消なのですか。
 二井知事 県も市も赤字解消という大きな課題を抱え、当然、(赤字解消を)図らなければならない。市の意向も受け、国に売却する方向性を決めた。

(2011年11月25日朝刊掲載)

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