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連載・特集

レンズはとらえた戦後70年 原爆ドームと厳島神社が世界遺産に同時登録 1996年12月6日 

人類の財産 守り抜く責務

 原爆ドーム(広島市中区)と厳島神社(廿日市市)は1996年12月6日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。同一地域にタイプの違う世界遺産が同時に誕生した珍しいケースであった。

 原爆ドームには核兵器の惨禍を世界に伝える平和の発信地としての役割が期待された。ただ登録に際し、米国が土壇場で「日本とは友好関係にあるが、今回の決定は支持できない」と反対を表明。中国も賛否を留保するなど、「負の遺産」をめぐり、戦後半世紀を経ても歴史認識に差がある現状が浮き彫りになった。

 登録範囲は、原爆ドームが被爆当時の惨状を今に伝える建物と敷地約0・39ヘクタール。第2次世界大戦にかかわる戦争遺跡としては、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所に続く2番目の登録だった。厳島神社は、社殿を中心とした建造物群と前面の海の一部、背後の弥山(みせん)を含む山林の計431・2ヘクタールが対象。弥山などの自然と建物群が生み出す一体的価値が評価された。

 ドーム、社殿とも、台風や地震、高潮、酸性雨などの自然の脅威にさらされ、これまで何度も修繕・修復を繰り返してきた。人類共通の財産を守る営みはこれからも続く。(村上昭徳)

(2015年11月18日セレクト掲載)

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