×

ニュース

被爆者手帳交付認めず 広島地裁判決 「駅にいた証拠ない」

 原爆投下時に爆心地から約2キロの広島駅(広島市南区)にいたのに、被爆者健康手帳の交付申請を却下されたのは不当として、広島市西区の女性(83)が市の却下処分の取り消しを求めた訴訟の判決が24日、広島地裁であった。小西洋裁判長は「女性が原爆投下時に広島駅にいたことを認める証拠がない」として、原告の訴えを退けた。

 小西裁判長は「広島駅にいたと直接証明する証拠は女性の供述のみで信用できない」と指摘。広島に向かうために出発した駅名などで、女性の説明が変わった点を踏まえ、「供述は内容自体が不自然であり、他人の供述とも整合しない」と判断した。

 訴状によると、女性は広島駅で被爆し手首や背中をけがした。駅員の指示で1、2時間ほど駅にとどまり、当時住んでいた生口島(尾道市)に戻るため列車に乗った。判決などによると、女性は2009~13年に計3回、手帳交付を申請したが、市は「女性の話に確証が得られない」などとして申請を却下していた。

 女性の代理人の広島敦隆弁護士は「供述の信用性だけに重きを置いた乱暴な判決。納得できない」と強調。市は「主張が認められたと考えている。今後も適正な審査に努めたい」としている。(浜村満大)

(2015年11月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ