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来年1月から全額支給 在外被爆者医療費 助成事業は一部維持

 海外に住む被爆者(在外被爆者)への医療費全額支給に向け、厚生労働省の新制度案の概要が25日、判明した。来年1月から、国内の被爆者と同様に全額支給する。国によって異なる医療事情に配慮し、民間保険なども支給対象にする従来の助成事業を限定的に残すことで利便性も維持した。

 新制度案は、被爆者援護法の施行規則を改正。医療費が年30万円以下の場合、援護法に基づく医療費支給のほか、従来の保健医療助成事業も選択できる。助成を選べば、領収書だけで医療費が支給されるほか、ブラジルでは民間保険、韓国では漢方薬が対象になる。

 年30万円を超えた場合は、領収書と診療報酬明細書(レセプト)など診療内容が分かる書類が必要になる。日本の診療報酬を基に算定した医療費の自己負担分を支給する。

 支給の事務は、広島県が北米や南米、長崎県が韓国を担当する。厚労省は来月23日まで、改正案への意見を募っている。

 在外被爆者を支援してきた広島大の田村和之名誉教授(行政法)は、新制度案を「ブラジルなどでは民間保険に使える上、医療費も支給され、改善が期待できる」と評価。一方、米国では従来と同様に民間保険への助成は見送られたため「現地で不満の声が上がっている」と指摘する。

 被爆者健康手帳を持つ在外被爆者は3月時点で4284人。援護法に国籍や居住地の規定はないが、国は「医療制度が異なる」などとして、在外被爆者には原則年30万円が上限の助成事業を適用してきた。最高裁は9月、「全額を支給すべきだ」との初判断を示した。(山本和明)

(2015年11月26日朝刊掲載)

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