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鳥取県・境港市・米子市と中電 原発安全協定 締結へ

 鳥取県の平井伸治知事は15日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)から30キロ圏内にある境港、米子両市とともに、中電と原子力安全協定を年内にも締結する方針を明らかにした。原発から8~10キロ圏とされる防災対策重点地域(EPZ)の圏外にある自治体では全国初となる。

 政府がEPZを30キロ圏内に拡大し、緊急防護措置区域(UPZ)とする方針でいる状況を踏まえ、必要に応じ協定改定に向けて協議することを条件に、中電と最終的な交渉を進める。

 福島第1原発事故を受け、鳥取県と両市は7月に中電と協議を始めた。県は、中電と島根県、松江市が結ぶ安全協定を基に協定に盛り込む19項目を提案。これに対し、中電は11月、損害補償など15項目に合意したが、原子炉増設・再稼働などの事前了解や、原発への立ち入り調査など4項目を拒否し、立地自治体との差を明確にする形で回答した。

 平井知事はこの日、両市との会議で、年内に協定を締結する方針を確認した。

 平井知事は「早期に協定を締結し、県民の安全確保につなげたい。今後も立地自治体並みの内容に深めていきたい」と述べた。(円山文雄)


<解説>増設時 扱い課題 広域被害想定し協議を

 鳥取県などが中国電力と結ぶ見通しとなった安全協定は、原発周辺の自治体へ協定を広げるモデルケースとなる。ただ原発増設時の事前了解などの扱いに課題も残した。事故の際の被害は広域に及ぶとの前提で、今後も双方が協議を重ねることが不可欠だ。

 中電が協定に含めると回答した項目には、情報提供や損害の補償などが含まれ、一定の前進をみた。防災対策重点地域(EPZ)の圏外にある自治体として全国初の協定となり、他の自治体と電力会社との協議で一つの基準となりうる。

 福島第1原発の事故では放射性物質による被害が広域に及んだ。住民の不安、事故の際の影響は、立地自治体と周辺自治体で線引きできるものではない。今回は見送られる公算の事前了解や立ち入り調査については、継続的な議論が必要だ。

 中電はこれまでEPZを根拠に、自治体が求める安全協定の拡大を拒んできた。今後は、自治体との協定改定の協議などにも、柔軟に対応する真摯(しんし)さが求められる。

 自治体側にも避難計画の策定、体制づくり、住民への周知と訓練など課題は山積している。さらに安全協定に対するスタンスは、周辺自治体の間でも一様ではない。自治体同士の連携強化も必要だ。(山本和明)

(2011年12月16日朝刊掲載)

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