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「差別や偏見 向き合って」 広島市立大・川田さん 大虐殺学ぶツアー報告

 ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)について学ぶ欧州スタディーツアー(主催・公益財団法人ヒロシマ平和創造基金)に参加した広島市立大3年の川田亜美さん(21)が、安佐南区の同大でツアーの報告をした。悲劇の歴史を繰り返さないため、今ある差別や偏見と人類誰もが向き合い闘っていく必要性を訴えた。

 約600万人が犠牲になった事実に被爆地広島出身の自分がどう向き合うか、ツアー中は思いを巡らせた、という川田さん。アウシュビッツ強制収容所跡(ポーランド)では、展示された遺品から持ち主の運命を想像し、一人一人の命を感じ取った。中でも子ども用の靴を見た時は特に胸が痛み、残された「人間の証し」から、罪のない老若男女を一方的に殺す人間の負の側面について考えた。

 アンネ・フランクの隠れ家(オランダ)で会ったボランティアの言葉も印象的だった。加害者側のオーストリア出身のこの青年から「いま差別や偏見と闘うことは全ての人間の義務」と聞いた。加害と被害の壁を越えて活動する姿に、アジア諸国を侵略した日本で、原爆を投下された広島の声を発信する平和活動をしていた自分たちが勇気づけられたように感じた。川田さんは「今後も、世界における平和のあり方を考えたい」と話していた。

 中国や、イスラエルとパレスチナを訪れた別の学生2人も報告し、会場で約20人が耳を傾けた。

 スタディーツアーは、中国新聞ジュニアライターの高校生2人と、広島県内の大学生6人が参加して3月に行われた。参加者による各大学・高校での学内報告会は、川田さんの報告を最後に全て終わった。(山本祐司)

(2015年12月22日朝刊掲載)

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