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安保法廃止へ広がる輪 「兵戈無用」「慈心不殺」胸に刻んで 非戦平和を願う真宗門徒の会が集い 広島市中区

 安全保障関連法をめぐる議論をきっかけに、浄土真宗の門信徒たちが今夏結成した「非戦平和を願う真宗門徒の会」が11月下旬、初の集いを広島市中区の本願寺広島別院で開いた。僧侶を含む約30人が、平和への思いを語り合って共有。願いを左右する国政の今後の動きを注意深く追いながら、仏法をよりどころとして、安保法廃止を目指した国への働きかけなどに粘り強く取り組む方針を確認した。(桜井邦彦)

 会は、安保関連法案の審議が大詰めを迎えていた7月下旬、呉市の浄土真宗本願寺派門徒、石橋純誓さん(52)が、知人の門徒たちに呼びかけて結成。本願寺派と真宗大谷派の賛同者が25都道府県で計4千人を超え、今も輪を広げる。今後は両派以外の門信徒にも賛同者を広げていく。

教えに照らして

 集いは、会員同士が活動について話し合ったり親睦を深めたりする狙いで開いた。呼びかけ人の石橋さんは「社会で起きていることを自分の問題としてとらえ、教えに照らすと、安保法制は決して見過ごせない」と強調。参加者からは「慈悲の教えを生き方の基準とし、戦いのない社会を目指した活動を続けよう」などの意見が出た。

 念仏者九条の会共同代表で西善寺(三次市)の小武正教住職(58)は、門徒の会を支援する立場で参加。「戦争や差別のない社会をつくることが、念仏をいただく者の生きる姿勢。殺さない、殺させないという教えは、憲法9条の精神と通じている。互いに協力し行動したい」と説いた。

 被爆者も集いに駆け付けた。原爆で母と姉、妹を亡くした広島市中区の波多野ヤエ子さん(90)は「人間は命を全うして終わるのが本来の姿だが、人を生きたまま殺すのが戦争。平和な生活を一変させる。二度とあってはならない。私も、何かお役に立つことがあればしたい」と訴えた。

 石橋さんは、学んだ教えを実生活で生かす必要性を説き続けた、龍谷大元学長の故信楽峻麿(たかまろ)さんの生き方を胸に刻む。兵も武器も一切用いないと説いた仏説無量寿経の「兵戈(ひょうが)無用」、慈悲の心を持って殺生しないことを教えた仏説観無量寿経の「慈心不殺」をよりどころに活動する。

抗議文送付続く

 会として、賛同者の名簿を添えた抗議文を安倍晋三首相に宛てて7、8月に1度ずつ郵送した。安保法の成立前後の9月17、18、19日には抗議のファクスを送信。その後も毎週、金曜日になると、「兵戈無用」「慈心不殺」と書いた安保法廃止を求めるファクスを首相官邸などに送り続ける。

 「法案通過は悲しかったが、諦めていないという私たちの意思表示」と石橋さん。「言論統制の厳しかった戦時中でも、戦争反対を表明した安芸門徒がいたと聞く。その姿勢を受け継ぎたい」と力を込める。

 こうした国への働きかけと合わせ、会は本願寺派に、安保法廃止を国に求めるよう書面で要望している。「このままでは70年前と同じあやまちを繰り返し、門徒を戦地へと送り出すことになる」との危機感からだ。

 現在は、安保法廃止に向けた全国的な運動に賛同し、署名集めに力を入れている。思いを分かち合う集いも、開催地を変えながら開き、活動の基盤を固める。石橋さんは「門徒同士の横のつながりを強め、生きた宗教として社会の問題に向き合う会にしていきたい」と話している。

(2015年12月21日朝刊掲載)

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