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油絵を防府図書館で発見 台湾「悲劇の画家」陳澄波 福岡の美術館に寄託へ

 台湾の近代美術を代表する洋画家陳澄波(チェンチェンボー)(1895~1947年)の作とみられる油絵「東台湾臨海道路」が、防府市栄町の市立防府図書館に所蔵されていたことが25日、分かった。同市出身の11代台湾総督上山満之進(1869~1938年)が28年に総督を辞任する際に制作を依頼したとされる。市は、近現代のアジア美術が専門の福岡アジア美術館(福岡市)に寄託する方針でいる。

 作品は縦69センチ、横129センチ。台湾東部の海岸線の丘陵と道が描かれている。手前には親子とみられる2人が白い布をまとって歩き、海には1隻の小舟。保存状態はおおむね良いという。

 陳は台湾・嘉義(かぎ)市生まれで、1924年に東京美術学校(現東京芸術大)に入学。26年に台湾出身の洋画家で初めて帝展に入選した。国民党軍が台湾住民を武力弾圧した47年の二・二八事件で処刑され、「悲劇の画家」といわれる。

 元龍谷大教授の児玉識さん(82)=防府市富海=が防府図書館の依頼で上山の伝記編集を進めていた6月、当時の新聞記事や資料から同図書館にある油絵は上山の依頼で陳が描いた可能性が高いことを突き止めた。同図書館は上山が開館に尽力した三哲文庫が前身で、本や絵を寄贈していた。

 8月には陳の孫で、陳澄波文化基金会の陳立栢(チェンリーポー)理事長(62)=嘉義市=が同図書館を訪問。作品の左下に陳のサインを確認した。「写真で存在は知っていたが、既に失われたと思っていた。知る限り陳の作品の中で2番目に大きい。非常に感動した」と話す。児玉さんは「台湾でこれほど評価されている画家が描いていたとは」と驚いた。

 陳の作品の修復に携わってきた東京芸術大の木島隆康教授(64)は「力強い筆触が独特で、陳の作品でほぼ間違いない。これをきっかけに日本での注目も高まるのでは」と期待する。(宮野史康)

(2015年12月26日朝刊掲載)

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