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被爆手記 アラビア語出版 カイロ大教授 2年かけ翻訳

 「ひろしまを語り継ぐ教師の会」の被爆体験記「語りびと」を、エジプト・カイロ大のマーヒル・エルシリビーニー教授(52)がアラビア語版で現地出版した。広島大で日本語研究の博士号を取得したエルシリビーニー教授が約2年かけ翻訳。会員の手元に16日、アラビア語版の本が届いた。(金崎由美)

 アラビア語版はA5判、320ページで、2011年12月に出版された。「語りびと」に収録されている証言38人分から、被爆時の惨状などをつづった20人分を選んだ。

 同会会員でカイロ日本人学校長を務めた平野幸三さん(72)=廿日市市=が旧知のエルシリビーニー教授に紹介したのがきっかけ。10年2月から「『建物疎開』の意味は」などと同会にメールで問い合わせながら完成させた。

 16日、製作に協力した同会事務局長の梶矢文昭さん(72)=広島市安佐南区=たちにエルシリビーニー教授から本が届いた。爆心地から1・8キロの上大須賀町(東区)で被爆、姉を失った体験をつづっている梶矢さんは「中東に被爆者の思いが伝わってほしい」と喜んだ。

 原爆資料館(中区)にはアラビア語の被爆体験記はなく、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が11年10月から翻訳した6人分を公開している。エルシリビーニー教授は「核兵器の使用が何をもたらすのか、核問題に揺れる中東の人たちに考えてほしい。広島への恩返しもしたい」とのメッセージを寄せた。

 同会の松島圭次郎会長(83)は「本を取り寄せて中東から被爆地を訪れる人たちに読んでほしい」と期待する。

(2012年1月17日朝刊掲載)

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