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社説・コラム

『ひと・とき』 フリージャーナリスト・中村一成さん=京都市 差別扇動 規制を訴え

 「新聞で『憎悪表現』と訳されるヘイトスピーチは、実際は悪質な差別扇動。放置すると過激になり、むき出しの暴力に変質する」。昨年の世界人権デー(12月10日)に広島市中区であった講演会で、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」に代表される排外主義的な言動の問題点を指摘した。

 新聞記者として勤務した京都市で2009年に発生した事件を取材。「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件」(岩波書店)にまとめた。「在日コリアンへの『死ね、殺せ、たたき出せ』という罵声は、人間以下の存在をつくり出すという意味で単なる『不快な悪口』ではない」と力説。「平等という民主主義の大前提を揺るがす」との危機感から、法律でヘイトスピーチを規制する必要性を訴えた。

 在特会の元代表が東京の朝鮮大学校前で行ったヘイトスピーチを法務省が昨年12月、人権侵害と認定するなど、差別扇動に厳しい目が向けられている。「東京や大阪ではヘイトデモに対抗して声を上げる人々の勢いが増している。社会の劣化にあらがう意思表示だ」(石川昌義)

(2016年1月15日朝刊掲載)

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