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汚染土 磁力で選別 県立広島大の三苫准教授ら 放射性物質の性質応用 試作機製造へ

 県立広島大生命環境学部(庄原市)の三苫(みとま)好治准教授(45)=環境化学=の研究グループが磁性鉄粉を使った汚染土選別装置を考案した。同准教授と東京の機械メーカーが試作機の製造を始める。電荷による作用で磁性鉄粉と放射性物質の含有物が吸着する性質を応用。既存の装置と異なり、常温で稼働でき、廃水も出ないのが特長。東京電力福島第1原発事故で発生した汚染土への活用を想定している。(伊東雅之)

 磁性鉄粉は、コピー機のトナーなどに使われる磁気を帯びた酸化鉄の粉。マイナスの電荷を帯びる。プラスの電荷を帯びる放射性セシウムなどが染み込む土と混ぜて結合させ、磁力を当てて軽い小粒の土だけ取り除く。

 同じ重さの土を採取した場合、小粒だけで構成される土は、大粒だけの土より、全体の土の表面積が広くなり、付着・浸透する放射性物質も多くなる。

 三苫准教授は「国が指定廃棄物として処理対象としている放射性セシウム濃度1キログラム当たり8千ベクレルを超す汚泥なども、小粒の土だけより分けて除去すれば基準値内に抑えられる」と説明する。同2万3600ベクレルの高濃度汚染土を使った実験では、全体の重さの27%を処理すれば、残りは8千ベクレル以下の土として処理せずに済む、との結果が出た。

 現在、放射性物質の除去には汚染土と水を混ぜてフィルターで土の粒をより分ける方法や、分離剤と混ぜた汚染土に高温の熱を加えて放射性物質を蒸発させる方法が採られているという。具体的な試算はこれからだが、磁性鉄粉方式の場合、鉄粉が比較的安価で、量もさほど使わずに済むため、既存方式よりコストは抑えられると三苫准教授はみる。「使用する磁性鉄粉は、さび水による環境汚染も起こさない」と話す。

 今月初め、科学技術振興機構(JST)の補助金事業に選ばれ、試作機製造の見通しが立った。汚染土と磁性鉄粉の混合工程と、磁力による土の分離工程をつないだ構造。JSTの補助金など総額6千万円の事業費で三苫准教授と三和テッキが共同で取り組む。

 三苫准教授は「磁力の強さや鉄粉の量を調節すれば、さまざまな濃度で放射性物質を含む土を取り除ける。まずは被災地で実用を兼ねた実験をしたい」と話している。

(2016年1月19日朝刊掲載)

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