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島根原発全停止 再稼働に厳しい視線 自治体トップ慎重

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の2号機が停止した27日、島根県と地元の松江市のトップは、福島第1原発事故の検証を踏まえた安全対策の必要性を訴え、再稼働に慎重な態度を見せた。先に定期検査に入った1号機と建設中の3号機も含めた原子炉の稼働には、国の判断に加え、地元の同意が欠かせない。中国地方唯一の原発の運転再開は見通せていない。(樋口浩二、明知隼二)

 中電は当初、2号機の再稼働を8月上旬としていた。しかし福島の事故で状況が一変。国は原発の安全性をチェックするストレステスト(耐性評価)の提出を求めているが、その提出時期さえ、まだ決まっていない。

 さらに、稼働へのハードルが構える。地元自治体の同意だが、島根県の溝口善兵衛知事は、福島の事故の検証とそれを受けた安全対策▽原発事故を想定した住民避難計画の策定―などを判断材料に挙げる。

 溝口知事はこの日、「ストレステストは理論計算」と述べ、国の評価も判断の参考にすぎない考えを強調した。福島の事故で、地震が原子炉に及ぼした影響を明らかにするよう国に求めており、「どこまで対策を取るのか詳細な説明が必要だ」と注文した。

 一方、松江市の松浦正敬市長もこの日、「安全対策をクリアしなければ、市民や議会の理解は得られない。稼働時期について何か言える段階ではない」と、同様に慎重な構えを強調した。

 加えて、島根原発から30キロ圏内にある周辺自治体の意見にも配慮する必要が出ている。政府が原発事故に備えた防災対策重点地域を拡大し、30キロ圏内を新たに緊急防護措置区域(UPZ)とする方針を示しているからだ。

 鳥取県は昨年12月、島根原発の30キロ圏内にある境港、米子両市とともに中電と安全協定を締結。再稼働への事前了解は盛り込んでいいないが、平井伸治知事は26日の記者会見で「意見を言う時には言う」と述べ、中電をけん制した。

 島根原発1号機は3月で運転開始から38年となる。政府は、原発の運転期間を原則40年に制限する見直し案を示しており、再稼働には厳しい視線が注がれる。3号機も稼働すれば、福島の事故後では初の新規原子炉の運転開始となる。

 中電と政府には、地元自治体と住民の不安を払拭(ふっしょく)するよう詳細で丁寧な説明が求められている。

(2012年1月28日朝刊掲載)

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