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島根原発全停止 「まず安全確保」「政策転換の時」 中国地方の市民賛否

 中国電力が中国地方で唯一の島根原子力発電所(松江市)を全面停止した27日、市民に受け止めを聞いた。再稼働については賛否が交錯。安全性確保など慎重な対応を条件に認める意見に対し、反対して脱原発を求める声も聞かれた。経済界は再稼働の必要性を主張した。

 広島市中区の中電本社。この日、「すべての原発いますぐなくそう!全国会議ヒロシマ準備会」など原発に反対する2団体が訪れ、再稼働をしないよう申し入れた。松江市では、反原発団体代表の杉谷肇さん(70)が「今こそ原発に頼らないエネルギー政策に転換する時だ」と訴えた。

 電力の安定供給への不安から、条件付きで再稼働を認めるのは、広島市南区の会社員砂田瑠美さん(34)。「安全性が確保されれば、電力確保のため仕方ない」。安佐北区の会社員大原正さん(39)も安全性確保を前提に「全面停止が続けば、今後も電力が足りるのか心配」と受け止める。

 光市の主婦山田裕美さん(41)は福島第1原発事故を挙げ「島根原発付近には活断層がある。絶対的な安全性の確保が先」。福山市の飲食店経営延岡隆行さん(35)も「原子力に代わる電力供給にめどをつけ、期間限定なら受け入れる」と再稼働に高いハードルを置く。

 中電が原発新設を計画する山口県上関町に隣接する同県平生町の上部(かんべ)若美さん(77)は「電力不足の不安がないなら動かさない方がいい」と話した。

 松江市の会社員藤田禎大(ただひろ)さん(36)は「子供への影響を考えると、再稼働してほしくない。だが、原発が地元経済を支えている面もある」と複雑な表情。「国民投票で決めてはどうか」と提案する。

 一方の経済界は、全面停止による産業活動への影響を懸念する。広島経済同友会の高木一之代表幹事は「安全性が確認された原発は、地元の理解を得ながら再稼働していく方向で考えるべきではないか」。岩国商工会議所の長野寿会頭も「当面、原発は必要。安全性をしっかり検証し、再稼働に向けて取り組むべきだ」とする。

 広島商工会議所の深山英樹会頭は「すぐに原発を廃止して再生可能エネルギーに移行することはできない」との見方を示した。

(2012年1月28日朝刊掲載)

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