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宍道断層「25キロ」を了承 規制委 中電説明に「十分」

 中国電力は29日、原子力規制委員会による島根原発2号機(松江市)の審査会合で、宍道断層の長さの評価を22キロから25キロに延長すると説明した。従来の評価では不十分と指摘してきた規制委側は「十分な回答が得られた」と25キロの評価を了承した。

 宍道断層をめぐっては2013年12月の審査申請以降、2度の追加調査をするなど議論が停滞していた。設備の耐震設計の目安となる「基準地震動」に影響する同断層の長さが固まったことで、審査は大きな節目を迎えた。

 中電の担当者は「22キロの評価を見直す調査結果は得られていない」とする一方、西端を3キロ西に延ばすと伝えた。新たな西端は「精度や信頼性が高い調査結果が得られている」とし、より安全な方向に評価を見直したと説明。規制委側は「より安全な考え方だ」などと理解を示した。

 規制委は従来の西端付近では、断層が延びていないと言い切れないと指摘。中電はこれ以上の詳しい調査が難しく、指摘を受け入れざるを得ないと判断した。

 今後は基準地震動の議論に入る。中電は長さの延長に伴い、現在600ガル(ガルは加速度の単位)の基準地震動の評価をやり直し、早急に結果を規制委に示す考え。引き上げ幅によっては、追加工事が必要となる可能性もある。

 原発の南約2・5キロにある宍道断層について中電は当初、活断層はないと説明。その後に8キロ、10キロ、22キロと見直した経緯がある。会合後、松蔭茂男上席執行役員は「地元の理解が得られるよう、丁寧に説明したい」と話した。(山本和明)

【解説】島根2号機再稼働急ぐ

 中国電力の島根原発2号機は、ちょうど運転停止から4年になる。原子力規制委員会へ再稼働に必要な審査を申請してからも2年余り。その中で電力小売りが4月に全面自由化される。中電が島根原発近くにある宍道断層の長さの評価を再延長すると決めた背景には、既存の2号機の再稼働を急ぎ、企業競争力を高めたい思惑がある。

 宍道断層の長さをめぐっては規制委と議論が平行線をたどってきた。審査が長引けば再稼働の時期は遅れる。中電には規制委の指摘を受け入れ、議論を先に進めたいとの思いがにじむ。

 断層の長さを延長すれば、耐震設計の目安となる「基準地震動」が上がる可能性がある。追加工事のコストが膨らむリスクが高まるが、長さの確定を急いで審査を前進させることを優先させた結果といえる。

 断層の長さは、地元住民が求めた運転差し止め訴訟でも争点になっており、中電は再延長を慎重に検討していた。ただ関西電力が29日再稼働させた高浜原発3号機を含め、他の原発も審査の過程で相次ぎ基準地震動を引き上げた。これが中電の決断を後押しする一因となった。

 宍道断層の存在や長さを見直すのは4度目になる。「これ以上延びることはない」と繰り返してきた中電。地元住民の納得を得るのは容易ではない。(河野揚)

(2016年1月30日朝刊掲載)

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