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沖縄海兵隊 岩国移転案 国に強い不信感

 米政府が日本政府に米海兵隊岩国基地(岩国市)へ在沖縄米海兵隊のうち約1500人を移転するよう打診した問題で、山口県や岩国市をはじめ、周辺の自治体などからも強い反発と懸念の声が相次いだ。

新たな負担 明確に拒否 岩国市長と知事

 山口県の二井関成知事と岩国市の福田良彦市長は7日、新たな負担増には明確な拒否の姿勢を示した。

 県庁の知事応接室で取材に応じた二井知事は険しい表情。「唐突にこういう話が出てきて、国に対して大きな不信感を持っている」と述べた。今後、事実確認を優先し、今月中に予定していた田中直紀防衛相との会談も「事実が確認できないようなら大臣に会っても意味がない」として先送りも示唆した。

 市役所で取材に応じた福田市長も「冷静に情報収集と確認をしっかりしたい。その後は(これ以上の負担増を認めない)市の基本スタンスを堅持して対応するに尽きる」と硬い表情で述べた。

「驚き」「あり得ぬ」 周辺自治体

 山口県和木町の古木哲夫町長は「けさのニュースで知って驚いている。知事と福田市長が調べたことをこちらにも伝えてほしい」と話した。さらに「(愛宕山地域開発事業跡地の売却合意も)最近決まったこと。すぐに違う話が出てくるのはどうかなと思う」と首をひねった。

 柳井市の井原健太郎市長は「防衛省は否定しており、コメントはできない」としたうえで、「唐突な印象。これ以上の負担増には応じられないとの共通認識のもと、県や岩国市などと足並みをそろえて対応していきたい」と話した。

 周防大島町の椎木巧町長は「米軍再編に対する、これまでの山口県や岩国市、周辺市町の基本方針を国は尊重するべきだ」と強調。「米軍再編が進んでいない段階で、何でこのような話が突然出てくるのか。不安がある」と述べた。

 広島県の湯崎英彦知事は岩国移転は日米間で協議していないと中国四国防衛局から説明を受けたと明かした。「仮に協議が始まれば騒音や危険性が過度に増す可能性がある。県民の安全、安心を守るという立場から適切に対応するよう国に求める」と述べ、日米両政府の協議の推移を見守る姿勢を示した。

 広島市の松井一実市長は「市民生活にどう跳ね返るか検証していない。コメントに時間がほしい」と発言。その後「県国際課が国から『そういう事実はない』と確認したのでコメントしない」とした。

 大竹市の入山欣郎市長も「防衛省から『協議はしていない』と聞いた」としたうえで、「さらなる岩国への基地機能集積はあり得ない。今回はまだ交渉にも入っていない段階だろう。政府が毅然(きぜん)としてノーと言えば議論にもならないのではないか」と話した。


「爆音増大」「なし崩し強化」 地元や隣県 住民団体反発

 米政府が在沖縄海兵隊の約1500人を米海兵隊岩国基地(岩国市)へ移転させるよう日本政府に打診していたことが報じられた7日、米空母艦載機移転に翻弄(ほんろう)されてきた地元をはじめ、隣県で基地問題に取り組む住民団体から一斉に反発の声が上がった。

 「岩国爆音訴訟の会」共同代表で、基地の北約1キロの岩国市桂町に住む津田利明さん(65)は「艦載機移転にも反対がある。あってはならない話だ。市が艦載機移転に協力姿勢だから、日米両政府からどうにかなると思われているのではないか」と指摘する。

 山口県周防大島町の住民団体「大島の静かな空を守る会」の河井弘志代表委員(75)も「海兵隊員が増えれば当然、基地の演習も増える。大島郡全域の爆音被害はさらに大きくなる」と危惧する。

 米兵に絡む事件・事故への懸念も根強い。「住民は負担軽減を願っているのに、さらなる負担の押し付け」と批判するのは「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」の大川清代表(53)。「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(58)=廿日市市=は「なし崩し的な基地増強になる。国は周辺市町の住民の声を聞くべきだ」とする。

 米軍機が飛行訓練を繰り返す中国山地や山陰にも反発が広がる。「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」事務局の茶木篤紀さん(44)=三次市=は「将来的には、低空飛行の回数が増す恐れもある」。「米軍の低空・戦闘訓練飛行の即時中止を求める益田地域連絡会」の中村照事務局長(74)=益田市=は「山陰でも住民生活への影響は避けられない。日本政府は国外移転を強く主張するべきだ」と訴える。

 「第九条の会ヒロシマ」の藤井純子事務局長(61)=広島市南区=は「基地強化となり、戦争のない世界を願う広島のすぐ近くから、戦争に向かうことになる。腹立たしい思いだ」と強調した。

(2012年2月8日朝刊掲載)

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