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戦中戦後の広島 絵筆で伝える 四国五郎さん遺作のポジ・フィルム849点 市公文書館寄贈へ

 反戦・反核や古里への思いを絵筆に託し、「市民画家」として親しまれた四国五郎さん(1924~2014年)。戦中戦後の広島の様子をつぶさに伝える水彩画など遺作のポジ・フィルム849点を、遺族が広島市公文書館(中区)へ寄贈する準備をしている。10日、代理で資料を整理した広島文学資料保全の会(土屋時子代表)メンバーが同館を訪れ、託した。活用に向けデジタル化を進める。(森田裕美)

 フィルムは、峠三吉「原爆詩集」の表紙絵や母子像、シベリア抑留体験を描いた作品など1999年刊行の画集に収めた代表作410点と、未収録の439点。

 未収録の作品には、85年に完成した市役所新庁舎の建設と被爆建物の旧庁舎解体工事で移り変わる風景を、市職員だった四国さんが描き留めたスケッチ92枚が含まれる。戦中、憲兵が厳しい監視の目を光らせる呉線車内、学童疎開に出発する子どもの列、戦後にぎわう闇市などを描いた水彩画もあり、当時の空気を生き生きと伝える。

 この日、土屋代表らから資料を預かった中川利国館長は「広島の記憶を伝える貴重な資料。広く活用できれば」と述べた。大阪市に住む長男の光さん(59)は「父は古里や平和のためになるならという思いで多くの絵を描いてきた。遺志に添い、必要なときに必要な人が活用できるよう残しておきたい」と話している。

(2016年2月11日朝刊掲載)

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