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海兵隊岩国移転案 知事 愛宕山売却を留保 「断固反対」

 山口県の二井関成知事は9日、昨年末に国への売却方針を決めた同市の愛宕山地域開発事業跡地について、日米両政府が4月下旬をめどに策定する在日米軍再編のロードマップ(行程表)を見極めるまで、売買契約を留保する方針を示した。突如、浮上した米政府が日本政府に打診した在沖縄海兵隊の米海兵隊岩国基地への移転案に反発。来週にも岩国市の福田良彦市長と上京し、防衛、外務の両省に「断固反対」の意思を示す。(金刺大五、酒井亨)

 二井知事は県庁で取材に応じ、岩国基地への約1500人移転案に「断固反対の姿勢で対応する」と強調。さらに玄葉光一郎外相が8日、沖縄の基地負担を国内で受け入れる必要性に言及したことを受け、「外相が一般論とはいえ、国内移転の可能性を示唆した。岩国が(行程表で)完全に外されることが明らかにされない以上は愛宕山の売却は当面、留保したい」と述べた。

 愛宕山跡地は県の公社の所有。防衛省は米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機59機を2014年までに岩国基地に移転する計画。部隊移転に伴う住宅などの建設用地として跡地75ヘクタールを約169億円で買い取り、今月中にも国と公社が売買契約を結ぶ予定だったが、知事の方針転換で急きょ凍結された格好だ。

 岩国基地では艦載機の他、米軍普天間飛行場(沖縄県)から空中給油機12機も移転する計画で、「上乗せ」となる海兵隊1500人移転案は県市が掲げる「これ以上の負担増は認められない」という基本方針に反する。二井知事は「基本スタンスを堅持して適切に対応したい」とした。

 福田市長も9日、市議会臨時会で「愛宕山の国への売却は留保する必要がある」と述べ、二井知事と共同歩調を取る考えを示した。


<解説>毅然とした対応必要

 二井関成知事は愛宕山跡地の売却方針の留保を「盾」とし、突然、浮上した在沖縄米海兵隊の岩国移転に強い抗議の姿勢を示した。売却の留保は県財政を圧迫する恐れもあるが、あいまいさを残さず、毅然(きぜん)とした対応が求められる。

 県側には国防に協力し、沖縄の負担軽減の観点から普天間飛行場からの空中給油機の移転をいち早く容認したという自負がある。当初反対した厚木基地からの艦載機移転にも一定の理解を示す。

 そこに海兵隊1500人移転案という新たな負担が表面化。折しも艦載機移転に協力姿勢の福田良彦市長が先月下旬に再選されたばかり。「何でも許すと国につけ込まれている」という不満が地元で増幅している。

 艦載機移転で県、市は普天間移設の見通しが立たない間の先行移転は認めないが、移転に伴う住宅用地は売却するという矛盾をはらむ方針を決めた。そのあいまいさが、さらなる地域振興策を引き出すカードという関係者もいるが、結局、新たな負担が浮上する事態となった。

 国が「三重苦」を迫るようなら、負担を全国で分かち合うという理念は崩れ、沖縄と岩国に負担が二極化するだけだ。県、市は回避に向け、国から確実な担保を取らないといけない。(金刺大五)

(2012年2月10日朝刊掲載)

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